暗闇で、ぬくもりを逃がしたくなくては体を丸めた。

  先ほどのラッセの言葉を思い出す。
  また涙が溢れてきた。

  (      大丈夫・・・アタシも覚悟を決める、決められる・・・・・・)

  髪を撫でた優しい指も、触れた温かな唇も、ラッセの匂いがした腕の中も、すべてが心地好かった。
  こんなに素直になれる場所があるなんて、知らなかった。
  ずっと、傍にいたいと思った。

  (だから、もう、戦える・・・・・・・・・そのせいで、ラッセの傍にいられなくなっても、アタシは後悔しない・・・)

  矛盾してることは分かってる。
  ラッセの傍にいるために戦うのに、その結果、離れることになるかもしれない、それでも戦おうとしている。

  ラッセは傍にいていいと言ってくれた。
  その言葉を信じていないわけではない。信じたい。信じたかった。

  (・・・でも、ラッセは、アタシを知らないから・・・・・・)

  知られたら、嫌いになるかもしれない。
  それでも、今なら、あの温もりを知ってしまった今なら、後悔はしないと思えてしまう。

  (      たとえ、あの腕のぬくもりを失うことになったとしても、それでも・・・・・・・・・)

  はぎゅっと瞳を閉じた。
  頬を伝った涙が、そのままシーツに吸い込まれていく。

  (      覚悟は、決まった)


  「愛してる、ラッセ」


  呟いた言葉は、暗闇の中へ溶けていった。








     >> #05−4








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