「どうだ、ソレスタルビーイングでやっていけそうか?」
  クラウス・グラードの言葉に、"ジーン1"ことロックオン・ストラトス       ライル・ディランディは肩を竦めてみせた。
  「俺を誰だと思ってんだ?」
  「分かってるさ、だからこそ頼んだんだ」
  相変わらずなライルの物言いに、クラウスは満足気に笑みを浮かべた。


  「そう言やぁ・・・」
  不敵に笑みを浮かべていたライルが、眉を顰めた。

  「クラウス・・・ソレスタルビーイングに、元AEUのエースがいる。何であんな奴が・・・・・・」
  ライルの言葉に、クラウスも表情を引き締めた。
  「AEU?! 誰だ?」
  「ほら! 女性でエースだった、えらく美人な・・・確か、『女王』とかって呼ばれてた・・・」
  「まさか!!?       レジーナ・?!!!」
  驚愕の表情を浮かべたクラウスに、ロックオンは納得した。

  〈レジーナ〉は〈女王〉という意味を持つ。
  (      だから、"女王"か・・・・・・)

  嘗てのAEUの、しかもエースだった人間がソレスタルビーイングにいる。
  偶然のわけはない。必ず裏があるはずだ。
  最悪の場合、ソレスタルビーイングの情報が、ひいてはソレスタルビーイングに協力を申し出たカタロンの情報までもが、連邦政府に、アロウズに漏洩する危険がある。

  「そうか・・・・・・レジーナ・がソレスタルビーイングに・・・よかった。それは本当によかった」
  しかし、クラウスはライルの予想とは反対に、安堵の表情を浮かべた。

  「?」
  「ああ、すまない・・・だが、彼女なら問題ないだろう」
  怪訝な顔をしていたのだろう。クラウスがライルに頷いた。
  どこか嬉しそうに、満足気に笑みを浮かべるクラウスの思索が分からず、ライルは疑問を口にした。

  「・・・・・・なんで、そう言い切れるんだ?」
  「彼女は、戦争を憎んでる。戦争を根絶するという、ソレスタルビーイングの理念に共感したんだろう」
  迷いなく言い切ったクラウスに、ライルは一つの可能性を口にした。

  「・・・・・・もしかして・・・クラウス、あの女と面識あるのか?」
  「彼女が覚えているかどうかは分からないが、な・・・・・・」
  そう言って、何か懐かしむような目をするクラウスに、ライルは悪戯心を抱いた。
  「何だ? もしかして、昔の女か?」
  「そんなんじゃないさ」
  笑いながら答えたクラウスが、ふっと表情を引き締めた。

  「彼女は、脆い。繊細で、優しく・・・・・・だから、あまりいつもの調子で虐めたりするなよ? 傷つきやすい女の子なんだからな」

  「・・・・・・・・・・・・それ、本当にあの女のことか? 人違いじゃないのか?」
  思わずそう口をついて出た。
  あまりにも、ソレスタルビーイングにいるあの女       とはかけ離れたクラウスの評価に、思い違いをしているんじゃないかと勘繰った。
  (もしかして、AEUで女性エースが、俺が知らないだけで二人いたとか?)
  怪訝な表情を浮かべるライルに、クラウスが笑った。

  「それなら、彼女に伝えてくれ。俺が『君が約束を守ってくれたことに感謝する』と言っていたと」
  「分かったよ・・・・・・伝えて『そんな奴は知らない』と言われても、俺は知らねーからな?」
  「ああ、それならそれで構わないさ」
  笑うクラウスに、ライルは再び肩を竦めた。

  (      それよりも、あの女のファミリーネーム、って・・・偶然か? ・・・・・・まさか、な・・・)

  目の前で笑うクラウスが、そんなものと知り合いの筈がない。
  その名に対して好意的な感情を抱くはずがない。
  (俺の、考えすぎか・・・・・・・・・)

  「・・・分かったよ、その臭いセリフそのまま、あの女に伝えておいてやるよ」
  不遜なライルの言葉に、クラウスが嬉しそうにもう一度笑った。








     >> #05−3 ・ real feeling








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