アロウズの大佐、カティ・マネキンがそのメールに気付いたのは、先の作戦失態についてリント少佐に嫌味を言われた後だった。
  ある意味で、リント少佐よりも苦手とする人物からのメールに、読まずに削除してしまおうかとも思ったのだが、気が変わった。
  (あの男からメールとは、珍しい・・・)
  面倒だからと、大抵のことは直接連絡を入れてくる男がメールを送りつけてくるのは稀だ。

  黙って立っていれば、その容姿だけで稼げそうな男なのに、口を開けば適当なことばかり言うシスコン野郎だ。
  コーラサワーの友人となれば、諦めもつくが。

  メールを開いて、マネキンは眉を寄せた。
  短い文章で、リント少佐と同配属になったことに対する嫌味が書かれている。
  自然と奴の軽い口調まで思い起こされて、マネキンは不機嫌にメールを削除しようとした。
  (なんのつもりだ、こんなことのためにわざわざ       これは・・・)
  最後の一文、オマケのように綴られた文章       馬鹿がお前の後を追おうとしてるぞ      .
  その一文が目に止まり、削除を思いとどまった。
  "馬鹿"が誰を指しているかは書かれていなくとも思い当たる。
  (・・・余計な気を使ったものだ・・・)

  直接このことを伝えれば、マネキンが動揺するとでも思ったのだろうか。
  それとも、リント少佐配属の嫌味を言った時点で、通信を切られてしまうと思ったのだろうか。

  ふっと笑みが漏れた。
        リント少佐のこと、気遣い無用。それと・・・馬鹿は貴様が面倒をみろ      .
  それだけ打って、送信ボタンを押す。
  (      あの馬鹿を巻き込むわけにはいかないからな・・・)
  今度こそメールを削除しながら、カティ・マネキンは僅かに微笑みを浮かべた。








     >> #04−5








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