鏡の中の自分を見据える。

  (・・・・・・・・・覚悟なんて、まだ出来ない      

  あんな些細なことで、今更自分がこんなに揺れるなんて思わなかった。想定外だった。
  こんなにも動揺するなんて、自分でも情けない。
  まだまだ弱い自分に溜息が漏れる。

  (・・・・・・何処まで行っても、アタシはアタシ以外には、させてもらえない・・・・・・)

  金髪と呼ぶには幾分淡すぎる色の前髪から、滴が伝う。
  顔を洗ったそのままに、鏡に映る紫の瞳を睨み返した。

  特徴的な色彩だと思う。
  一度見たら忘れられない、とまではいかなくても、人の記憶には残りやすいだろう。

  (・・・・・・それでも、アタシはまだ、でいたい・・・・・・)

  自分をとして接せない人間が、ソレスタルビーイングにいるだろうことも容易に想像がついていた。
  それでも、自分はソレスタルビーイングに加わることを決めた。
  それが自分の答えだ。

  (・・・・・・"女王"としてじゃなくたって、まだ、やれることはある筈・・・・・・)

  タオルに顔を埋めた。
  沙慈・クロスロードに、沙慈・クロスロードの置かれた状況に揺らいだ心を沈めたかった。

  (・・・・・・こんなんじゃ、スメラギ・李・ノリエガと向き合えない・・・・・・)

  タオルから顔を上げて、もう一度鏡を睨みつけた。
  淡い金色の髪に、紫色の瞳をした女が鋭く自分を見据えている。


  「・・・アタシはなんだから      


  は、鏡の中からの鋭い視線を真正面から睨みつける。


  「      ソレスタルビーイングのなんだから」


  (今は、まだ・・・・・・)

  は鏡から視線を逸らした。








     >> #03−3








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