「ヴェーダからの通信です!」
「ヴェーダから?!」
スメラギは驚きに目を見張った。
量子型演算システムが自ら通信を寄越すなんて、それも今までイノベイターに掌握されていたものが だが、続くフェルトの報告は、スメラギをさらに驚かせた。
「はい、バックアップから外れている新型機が、ダブルオーライザーと交戦していると!」
「新型機ですって?!」
「・・・・・・間違いない。そんなことが出来るのは、彼 リボンズ・アルマークしかいない・・・」
「・・・リボンズ・アルマーク・・・・・・」
隣に立つビリーの言葉をスメラギは繰り返した。
そのリボンズが、全ての黒幕なのか .
「トレミーを出すぞ!」
「アイオンさん!!」
ブリッジの扉が開き、ラッセが中へ駆け込んできた。
「無事だったのね!」
目立った外傷もないラッセの様子に、スメラギも安堵の表情を浮かべた。
正直、細胞異常に犯されたラッセの体がもつとは思っていなかった。
その心配も杞憂だったと知り、スメラギは安堵したのだが、ラッセは何故か複雑な表情を浮かべた。
「何とか・・・・・・」
ラッセの視線が、スメラギの横に立つビリーに向けられた。
「は? 一緒じゃないの?」
瞬間、ラッセの表情が引き締まった。
「まだ戻ってないのか?」
「え?」
「そいつがいるから、ブリッジにいないのかと思ったんだが・・・・・・」
険しい表情で呟くラッセに、スメラギは先のビリーに向けられた視線を理解した。
ブリッジにがいないのは、部外者がいることを考慮したためだと考えたからだ。
だったら、は .
「刹那を援護する」
「ラッセ?!」
操縦席へ向かうラッセの背中を呼び止めた。
だが、操縦席に腰を降ろしたラッセは、トレミーの発進準備に取りかかろうとしている。
「は!?」
「今は、この戦いを終らせることが先だろ!!」
ラッセの言葉に、スメラギは息を呑んだ。
その通りだ。
表情を引き締めて、スメラギも自らの座席に腰を降ろした。
「イアン、攻撃の準備を」
【了解した】
サブブリッジのイアン、続いて医務室へと通信を繋げる。
「アレルヤ、出られる?」
【行きます!】
治療を受けているマリーの傍に居たいはずはないのに、アレルヤからしっかりとした返事があった。
「・・・・・・あいつなら・・・なら大丈夫だ・・・・・・」
ラッセの呟く声が聴こえた。
スメラギは唇を引き締めて、ケルディムにいるロックオンへ通信を入れた。
「感謝して欲しいな。君がその力を手に入れたのは、僕のおかげなんだよ? 刹那・F・セイエイ」
リボンズ・アルマークはセラフィムを落とし、そして今、余裕の笑みを浮かべ、ダブルオーライザーに乗る刹那の前に現れた。
「・・・・・・俺を救い、俺を導き、そして今また、俺の前で神を気取るつもりか!!?」
「いいや、神そのものだよ」
「そこまで人類を支配したいのか!!!」
当然だと笑うリボンズに、刹那は声を荒げた。
そんな刹那を高みから見下ろして、リボンズは人を嗤う。
「そうしなければ、人類は戦いをやめられず滅びてしまう。救世主なんだよ、僕は!!」
「共に歩む気はないと?! 分かり合う気はないのか!!?」
世迷言だというように、リボンズは刹那の言葉を嘲笑った。
「人間が自分たちの都合で動物を管理しているのと一緒さ。
それに、純粋種となった君に打勝てば、僕の有用性は不動のものとなる」
「・・・そのエゴが、世界を歪ませる・・・・・・貴様が行った再生を、この俺が破壊する!!!」
「いい覚悟だ!」
刹那の乗るダブルオーライザーと、リボンズの乗るリボンズキャノンとが、激しくぶつかり合った。
次の瞬間には、お互いに距離をとって銃撃戦へと突入する。
放たれる電撃を避け、撃たれる銃撃を避けて、ダブルオーライザーはリボンズキャノンの懐に飛び込んだ。
「ここは、俺の距離だ!!」
抜き放ったソードをダブルオーライザーはリボンズキャノンに向けて振り下ろした。
しかし、ダブルオーライザーの攻撃はリボンズキャノンの抜いた剣に遮られ、大きく弾かれてしまった。
「何?!! ・・・あ、あれは・・・・・・」
驚く刹那の目の前で、リボンズキャノンが変形していく。
二つの疑似GNドライブを抱く、その姿はまるで .
「ガンダム!!?」
「ツインドライブシステムが、自分だけのものと思っては困るな・・・
そうとも! この機体こそ、人類を導く、ガンダムだ!!!」
宣言とともに、リボンズのガンダムがダブルオーライザーの懐へ飛び込んできた。
何とかその攻撃を受け止め、ダブルオーライザーは距離をとろうとした。
「遅い!」
「!!?」
容赦ない銃撃が、ダブルオーライザーの右足を破壊する。
「ふん」
嘲笑いながら、リボンズはダブルオーライザーの肩部を破壊した。
「っち!! !! くぅ!!!」
リボンズのガンダムから距離をとろうとしていた刹那は、放たれたビーム砲を何とか避けた。
前方から、イノベイター機が2機、向かってくる。
このままでは、リボンズのガンダムと、イノベイターの機体に挟まれてしまう。
「く・・・・・・」
何とか逃げ切ろうとする刹那に向かって、再びイノベイター機からビーム砲が発射された。
「 は!!!」
避けきるのが難しいかと思われたその攻撃が、ダブルオーライザーの目前で障害物に遮られた。
【刹那!!】
視線を向ければ、こちらへ向かってくるケルディムと、飛行型に変形してスピードを上げたアリオスの姿が見えた。
「ロックオン! アレルヤ!!」
イノベイター機の攻撃を避けながら、ビームを連射して、アリオスが宙を駆ける。
【はははは、はははは!! 超兵復活と行こうぜ!!! ・・・戦うさ! 僕たちの行動に、未来がかかってる!!】
叫びながら、アリオスが高速でイノベイター機に攻撃を仕掛け、その機体を破壊していく。
最後の悪足掻きを見せるイノベイター機に突き刺さり、ハレルヤが吼えた。
【ははははは!!! ヴェーダに依存しっ放しで、俺たちに勝てるわけねぇだろう!!!】
イノベイター機が一機、爆発して宇宙に散った。
「っち」
リボンズは舌打ちをすると、装備されていたファングをダブルオーライザーとアリオスに向けて放った。
【うわっ!!】
避けきれずに、アリオスで小さな爆発が起こった。
リボンズは警報音に視線を向けた。
リボンズの乗るガンダムに向けて、トレミーから砲撃が放たれるのが見えた。
「そんな攻撃!!」
リボンズは砲撃を避け、ビームを放った。
攻撃は見事にトレミーに命中した。
黒い煙を吐いて、トレミーが進路を外れていく。
悪足掻くかのように、トレミーからスモーク弾が発射された。
リボンズの乗るガンダムの周囲を、スモークが包み込む。
こんなもので逃げようというのか リボンズは鼻で笑った。
「目晦ましなど ?!!」
背後から切りかかってきたダブルオーライザーに対応出来たのは、運が良かった。
リボンズは、ダブルオーライザーに向けて、ミサイルを放った。
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