「・・・・・・今のGN粒子は何だ?! 僕の脳量子波を乱して・・・」
リボンズ・アルマークも頭を押さえた。
今まで思いのままに、自分の望むままに操れていたものが、その瞬間消え失せた。
望むままに進んでいた未来を見失った。
〔 このときを待っていたよ・・・ 〕
「? リジェネ・レジェッタ!?」
響いた声に、有り得ないとリボンズは声を上げた。
自分が殺したはずだ。
今、目の前に倒れているティエリア・アーデと同じように .
「!?」
突如、ヴェーダが発する光が翠から紅へと変化した。
「ヴェーダが、僕とのリンクを拒絶した?!! まさか、システムを!!!」
〔 リボンズ、君の思い通りにはさせない・・・そうだろ? ・・・ティエリア・・・ 〕
「!!」
リボンズは慌てて振り返った。
死んだはずのティエリア・アーデの瞳が、イノベイターの光を放っていた。
ダブルオーライザーと交戦していたイノベイター機は、溢れ出る粒子の波に押し戻されていた。
「の、脳量子波が、乱れる!!」
溢れ出す粒子の渦に、リヴァイヴ・リバイバルは憎憎しげにダブルオーライザーを睨んだ。
「あのガンダムだ!! あのガンダムさえあれば、僕たちだって!!」
〔 それだけじゃない・・・・・・ 〕
「リジェネ・レジェッタ!!?」
突然頭に響いた声に、リヴァイヴは驚きの声を上げた。
〔 純粋なるイノベイターの脳量子波が、ツインドライブと連動し、純度を増したGN粒子が、人々の意識を拡張させる。
完全なる進化を遂げたか! 刹那・F・セイエイ!!
・・・・・・君こそが、真のイノベイターだ!! 〕
響くリジェネの声に、リヴァイヴは悔しさに奥歯を噛み締めていた。
敵の動きがおかしいことに、ブリッジにいたミレイナが気付いた。
「! セ、セラフィム、トライアルフィールド、発動させたです!!」
ミレイナの声が弾んだ。
「ヴェーダとリンクしている機体が、次々と停止しているです!!」
「取り戻したんだ、ヴェーダを・・・これで、戦いが終る!!」
フェルトも、モニターから顔を上げて嬉しそうに叫んだ。
「・・・!! ついにアレを使ったか!! ティエリア!!!」
イアンも喜びに声を上げた。
敵の機体が、オートマトンが次々とその機能を停止していく。
ティエリアが乗るセラヴィーガンダムに隠された、もう一つのガンダム セラフィムが起動したからに違いなかった。
ヴェーダのバックアップを受ける全ての機体を支配下に置くことができる、対イノベイターの切り札とも言うべき機能だった。
「ティエリア!!」
ついにヴェーダを取り返した、そのことに、スメラギも微笑を浮かべた。
粒子の渦で戦場を包み込んだ刹那は、隔壁を破壊し、ヴェーダのあるポイントへ足を踏み入れた。
「!! これが、ヴェーダの本体・・・・・・」
初めて目にする巨大な量子演算システムを見上げた刹那は、宙を漂う人影に目をとめた。
「あれは!! ティエリア!!」
叫んで刹那はティエリアに近づいた。
「ティエリア・アーデ!? ・・・!!」
刹那は息を呑んだ。
真っ赤に滲む血が、もう彼が生きていないことを告げていた。
「・・・・・・仇は討つ!」
〔 勝手に殺してもらっては困るな・・・・・・ 〕
突然聴こえたティエリアの声に、刹那は辺りを見回した。
だが、どこにも生きている人間の気配はない。
「どこだ?! どこにいる? ティエリア!!」
〔 今、僕の意識は、完全にヴェーダとリンクしている 〕
「ヴェーダ・・・?」
刹那は、ヴェーダを見上げた。
〔 僕は、イノベイター・・・いや、イノベイドでよかったと思う。
この能力で、君たちを救うことが出来たのだから・・・ 〕
「!?」
〔 ヴェーダと繋がったことで、僕は全てを知ることが出来た。
今こそ話そう・・・・・・イオリア計画の全貌を 〕
驚く刹那に、ティエリア、いや、ヴェーダは静かな声で語り始めた。
〔 我々の武装介入行動は、矛盾を孕みつつも世界の統合を促し、
たとえ滅びようとも、人類の意思を統一させることにあった・・・
それは、人類が争いの火種を抱えたまま、外宇宙へ進出することを防ぐためだ。
人類は、変わらなければ未来を紡ぐことが出来ない。
いずれめぐり合う、異種との対話に備えるためにも・・・・・・
そのためにも、僕たちは分かり合う必要がある 〕
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