【何がどうなってやがる!! くそっ!! 動けってんだよ!!!】
  アリー・アル・サーシェスは急に機能停止した機体を何とか動かそうと、必死で操縦幹を握っていた。


  「・・・・・・兄さんのことを責められねぇな・・・こいつだけは、許せねぇ!!」

  にやりと唇を歪めて、ロックオンはケルディムの銃をアリー・アル・サーシェスの乗る機体に向けた。
  滅多撃ちに銃を乱射した。これで      .

  「!!」
  さっさと機体を捨てて逃げていくアリーの背中が、通路に消えるのを視界が捉えた。

  「待てよ、てめぇ!!」
  ロックオンも後を追うために、コックピットを飛び出した。


  「そこまでだ!!」
  仇の背中に照準をぴたりと中てて、ロックオンは叫んだ。

  観念したのか、仇の男は持っていた銃から手を離し、両手を上げた。
  その背中をロックオンは睨みつけた。


  「・・・・・・・・・こいつが・・・こいつが、父さんも、母さんも、エイミーも・・・兄さんも・・・・・・!!」

  引鉄にかかる指に力が入る。
  みんなの、仇を      .


        ライル・・・私たち、分かり合えてるよね?      .


  ロックオンは、はっと我に返った。
  仇を討っても、何も戻りはしない      .


        分かり合えたよね?      .


  ロックオンは引鉄から指を離した。
  仇を討っても、失ったものは帰ってこない      .

  「馬鹿がぁ!!!」
  アリー・アル・サーシェスが、銃を掴んで振り返った。

  ロックオンは降ろしかけた銃を撃った。
  続けて撃った2発の銃弾は、男の胸へと吸い込まれた。


  静かになった通路で、ロックオンは瞳を伏せて踵を返した。

  (アニュー・・・・・・お前のおかげで、人と人が分かり合える世界も、不可能じゃないって思えたんだ・・・
   ・・・だから! 世界から疎まれても、咎めを受けようとも・・・・・・)

  ロックオンはケルディムガンダムを見上げた。


  「俺は戦う! ソレスタルビーイングの、ガンダムマイスターとして!!」

  ロックオンとして生きる決意をガンダムは黙って受け止めていた。





















  「・・・・・・すぐに・・・・・・戻る、から・・・」


  は、そっとその頬に笑みを浮かべた。

  コックピット内を漂う花に、そっと指を伸ばした。


  「・・・絶対、に・・・・・・」


  約束したんだ。
  ラッセに、花を無事に返すと。

  願ったんだ。
  ラッセの、傍にいること。


  「・・・・・・ラ、セ・・・・・・」


  漂う紅い雫も、もう目に入らなかった。

  健気に咲き続ける、その花しか見えなかった。


  「・・・ねぇ・・・・・・・・・アタシも・・・・・・」


  が乗る試作機の傍、動きを止めた特攻兵器が、漂う機体と接触した。

  宇宙の片隅で、小さな爆発が命を散らせた。





















  「セラフィム、大破!!」

  「ティエリアは?」
  フェルトの報告に、スメラギは青ざめた。

  「反応ありません・・・」
  「もっとよく探すのよ!!」
  口元を押さえて今にも泣き出しそうなミレイナに、スメラギは叫んだ。

  セラフィムの隠されていた能力によってヴェーダをバックアップにもつ機体は、動けなくなるはずだった。
  なのに、セラフィムが落とされた      .
  「・・・・・・トライアルフィールドの中で、動ける敵がいる・・・」

  「・・・彼だ・・・・・・」
  スメラギの疑問に、隣に立つビリーが呟いた。
  「彼?」

  「イノベイターを超えた、イノベイター・・・・・・」

  不吉な言葉に、スメラギは眉を寄せたのだった。
















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