「う・・・!?」
  トレミーの通路を、壁を這うようにして進んでいたラッセは立ち止まった。

  「何だ・・・体の、痛みが・・・・・・」
  先ほどまで、あれほど痛みを訴えていた体が、不思議なほど軽かった。
  痛んだ胸にそっと手を当ててみるが、まったく何ともない。
  「これは・・・・・・」

   ・・・まだだ!! アタシは・・・アタシは 、まだ戦える!! 戦わなくっちゃ・・・・・・・・・ 

  「?!」
  頭の中で響いた声に、ラッセは、はっと顔を上げた。


   守るんだ! もう、トレミーしか、ラッセの傍しか・・・
   守らなきゃ・・・戦わなきゃ・・・・・・!
   そうしなきゃ、そうじゃなきゃ・・・・・・!! 

  「?!!」
  まるで泣いているような       いや、泣いているの声が聴こえた。


   やっと手に入れた、アタシの場所・・・アタシのいる意味・・・・・・
   失いたくない、無くしたくない・・・だから、戦わなきゃ!!!
   ・・・・・・やっと、出来たアタシの意味・・・・・・そのためなら、この命なんて       

  「!!!」

  ラッセは叫んだ。
  の声が聴こえるなら、自分の声だって、きっと届くはずだと      .


   ラッセ? ・・・・・・大丈夫。アタシが守るから。
   トレミーも、みんなも、ラッセも・・・
   だって、それがアタシのいる意味だから・・・ 

  「・・・・・・?!」


   知ってるよ、アタシがアタシでいられるのは、ラッセの隣だけ・・・だから、アタシはその場所を守りたい
         それが、やっと見つけた、アタシがソレスタルビーイングにいる意味・・・
   ・・・だから、それを守るのが、アタシがラッセの傍にいる理由・・・
   ・・・それを失いたくないの・・・!! だから、アタシは戦わなきゃ・・・!!! 

  「?!! だがっ!!」


   ラッセは言ってくれたけど・・・アタシは戦うことしか出来ないから。
   戦うことしか出来ないから・・・・・・だから、戦わないと・・・
   ・・・やっと、守るための戦いが出来るのに・・・
   ・・・戦わないと、そうしないと、アタシがここにいる意味が、
   ソレスタルビーイングにいる意義が、
   ラッセの傍にいられる理由が無くなっちゃう!!! 

  「理由ならある!!!」
  の悲鳴に負けないように、ラッセが叫んだ。


  「俺は、お前を愛してる! 俺が、一緒にいて欲しいと思ってる!! 傍にいて欲しいと願ってる!!!
   他でもない、お前に! に!!!!」

  叫んで、ラッセはに語りかけた。


  「お前にとっての戦う理由が俺だと言うなら、俺にとっての生きる理由は、お前だ!!
  俺にとって、何よりも大切なのは、お前なんだ! 俺の傍にがいることなんだ!!」

  ラッセは、ふっと微笑を浮かべた。


  「・・・戻って来い。・・・・・・頼むから、俺の生きる理由を奪わないでくれ・・・」
   ・・・・・・ラッセ・・・ 

  「戻って来い。俺の傍に」
   うん・・・・・・すぐに・・・すぐに 

  「ああ。待ってるぞ」
  ラッセは、ブリッジに向かって走り出した。








     >> #24−6








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