刹那は、イノベイターの専用機2機と交戦を続けていた。
トランザムを発動させたイノベイター機に、刹那は表情を引き締めた。
このままでは .
「トランザム!!」
トランザムを発動したダブルオーライザーが、粒子を纏う。
〔 どうしたんだよ、ルイス!!! 〕
「?!!」
溢れる粒子の光の中で、刹那は突如脳裏に響いた声に目を見開いた。
「この声は・・・・・・?!!」
〔 ルイス!! ルイス!!! ルイス!!!!!!! 〕
叫ぶ沙慈の声が刹那の脳に響き渡る。
「ルイス!? 沙慈?!!」
〔 私は戦う! 〕
「!!? この声!!」
また別の声が刹那の脳に届いた。
目に映るのとは別の映像が見えた。
〔 私たちの意志で、未来を作るために!! 〕
銃を構えたスメラギが、ビリー・カタギリと相対している。
銃を構えるビリーの腕が震えている。
〔 ・・・どうして、お前たちは・・・・・・!! 〕
スメラギが構えていた銃を降ろした。
だが、ビリーの銃はスメラギに向けられたままだ。
引鉄にかけられた指に、ゆっくりと力が込められていく。
〔 ・・・どうして、君は、分かってくれないんだ!? そうやって、いつも!!! 〕
「スメラギ!!!?」
このままではスメラギが撃たれると思った。
だが、刹那の声はスメラギに届かないのか、彼女は銃を構えようとしない。
目に映る映像が、イノベイター機の接近を伝えて、刹那はその攻撃を受け止めた。
戦場は爆発が繰り返され、そのたびに誰かの命が散っている。
〔 マリー!!! 〕
「?!!」
再び、刹那の脳で声が響いた。
見えるはずのない、トレミーを守るために奮闘するアリオスと傷だらけのGNアーチャーが見えた。
攻撃を受けるGNアーチャーを守ろうとしながら、アリオスも敵の集中砲火に曝されている。
〔 うわぁぁぁぁぁぁぁ!!! 〕
「アレルヤ!!!」
このままではもたない、と思った。
〔 しぶてぇんだよ!! ソレスタルなんたら!! 〕
別の声が、刹那の脳に響いた。
〔 くそったれが!!! 〕
アリー・アル・サーシェスと戦っている、ロックオンの姿が見えた。
ケルディムの銃が蹴り飛ばされる。
〔 うわぁぁ!! くそったれがぁ!!! 〕
「ロックオン!!!」
このままでは殺やられる、そう思った。
〔 くっそう・・・・・・!! 〕
また別の声がした。
苦しそうに胸を押さえて、ふらふらとオーガンダムから離脱しようとするラッセの姿が見えた。
〔 ここまでかよ・・・・・・ 〕
「ラッセ!!!」
いつもの彼らしくない、諦めたような声と、力ない瞳に、刹那の焦りが募った。
〔 アタシはっ!!!!! 〕
それは、刹那が今まで聞いたことのない、の叫びだった。
特攻兵器の攻撃に翻弄される旧型のMAが見えた。
もう、機銃も一砲しか残っていない。
辛そうに眉を寄せたコックピットのの、パイロットスーツが紅く濡れていた。
〔 まだ! まだ!! 戦える!!!!! 〕
「!!!」
〔 このままじゃトレミーが!! 〕
〔 まだよ! まだ諦めちゃ駄目!!! 〕
「ミレイナ!フェエルト!!」
攻撃の衝撃に揺れるトレミーのブリッジで、必死に作業している二人が見えた。
〔 ミサイルの残りが!! 〕
〔 こんなところで!!! 〕
「イアン!! リンダ!!」
サブブリッジでトレミーを守る二人の、焦りの色の濃い顔が見えた。
イノベイターと激しく切り結びながら、刹那は唇を噛み締めた。
「みんなの命が、消えていく・・・!!」
このままでは駄目だ。このままでは .
刹那は操縦幹を握る手に力を込めた。
させない。絶対に .
「・・・・・・そんなこと!! させるかぁ!!!」
刹那は叫んだ。
『MAX OORAISER TRANS−AM BURST』
モニターに表示されたダブルオーライザーの声が、刹那に応えた。
変われ、刹那。変われなかった、俺の代わりに .
「 ・・・そうだ。未来を作るために、俺たちは、変わるんだぁぁ!!!!! 」
溢れ出した粒子がダブルオーライザーを包み込み、そして渦となって戦場を包み込んだ。
無限を描く粒子の渦が、全ての者を包み込んでいった。
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