「トレミー、着艦したです!!」
GNフィールドを艦首に集中して、かなり強引に敵母艦に突っ込んだ。
激しく揺れながらも、何とか無事に止まったトレミーに、は小さく息を吐いた。
【アーチャアリオス、トレミーを防衛する!!】
着艦したトレミー目がけて押し寄せるMSを撃ち落しながら、アレルヤが告げた。
は表情を引き締めた。
今はまだ、安堵するには早すぎる。
「敵母艦の構造をスキャンして、ヴェーダ捜索に入ります!」
「お願い」
フェルトとスメラギの声を聞きながら、は操縦幹から手を離した。
もう自分がトレミーのブリッジでやれることはない .
「俺は、オーガンダムに行く!」
「 アタシも、出る」
ラッセと共に操縦席から立ち上がった。
ブリッジの視線が、に向けられる。
驚きと、困惑と、非難の入り混じった瞳に、は肩を竦めた。
「・・・」
咎めるように呼ばれた。
「試作機がある」
「さん!!」
明確な非難を含んだ声が止める。
「積んであるのに、使わないのは勿体ないでしょ?」
「でも・・・・・・」
困ったように声が漏れる。
「ブリッジにいても、することがないもの」
「・・・・・・本気なのね?」
は再び肩を竦めてみせた。
「以前のように、とはいかないことは分かってる。機体も、体も」
GNSは、疑似GNドライブの損傷が激しくて修理は無理だった。
の体も、以前のように飛ぶことには耐えられそうにない。
すべて受け入れた上で、はトレミーを守るために出来ることをしようとしている スメラギは頷いた。
も、真剣な顔で頷き返した。
「頼んだわよ、、ラッセ」
「了解」
「・・・ああ」
ふっと表情を緩めて、は心配そうなフェルトに視線を向けた。
「ヴェーダ見つけて、さっさと脱出しよ。ね、フェルト?」
「・・・はい!」
しっかりと頷いて、フェルトは表情を引き締めて再びモニターに視線を落とした。
そんなフェルトに、は満足気に微笑を浮かべた。
「 」
「ラッセ」
非常用照明の下で、が、にっこりと微笑んだ。
「大丈夫。アタシは大丈夫」
「・・・・・・」
それでも心配そうなラッセに、は微笑む。
「約束する。無理はしない・・・っていうか、無理できないし」
「・・・・・・だが」
はラッセに触れた。
「アタシがアタシでいられるのは、ラッセの傍・・・アタシが帰る場所は、ここだけ。だから 」
はラッセを見つめた。
「ラッセも、必ず無事で」
「・・・ああ。も」
触れようとしたラッセを、が微笑んで止めた。
「無事に戻ってきてから・・・・・・」
「・・・必ず、無事で」
ラッセの言葉に、が頷いた。
背を向けて歩き出す。
「・・・・・・!!」
呼び止められた声に振り返れば、ラッセがに向かって何かを放り投げた。
「?!!」
咄嗟に受け止めて、は手の中に収まったそれが何かを理解した。
一輪の花だった。
カプセルに入ったその花は、リンダがラボで育てていたもので、武器や装備と一緒にトレミーに運び込まれたものだった。
平和と安寧を願って育てていたその花を、希望する人にリンダが快く渡しているのは知っていたが .
「・・・ラッセ、これ・・・・・・」
「リンダさんにもらった。一旦、お前に預ける。だから、絶対、返しに来い」
照れくさそうにそう言って、心を決めたのか、ラッセが真っ直ぐにを見つめた。
リンダに何と言って貰ったのか・・・それを思って、は小さく微笑んで頷いた。
「・・・分かった。必ず、無事に返すよ・・・・・・ラッセも、気をつけて」
「ああ・・・・・・もな」
頷いて、が、するりと背を向けた。
しばらくその背中を見送って、ラッセも踵を返した。
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