トレミーは大量のオートマトンと、次々と向かってくるMSの攻撃に曝されていた。
  アリオスとGNアーチャーが並んでトレミーの前に立ち塞がり、向かってくるMSを撃墜している。
  ラッセの乗るオーガンダムも、トレミーの真下から、接近するMSを撃ち落している。

  「こんだけ狭けりゃぁ、トランザムは使えまい!!」
  トレミーが突入したドッグは狭い。
  向かってくる敵MSも絶え間ないが、入口が狭い分、一気に数で向かってくることは出来ない。


  「・・・・・・っち・・・」
  は唇を噛み締めた。
  トレミーを包囲するオートマトンの数が多すぎるのだ。
  トレミーの上部を飛びながらも、取り付くオートマトンを全て破壊するのは正直厳しい。

  オーガンダムには粒子貯蔵タンクが付いているが、の乗るこの試作機にそんなものは付いていない。
  GNエンジンですらない。
  武器も、GN粒子を使うようなハイテクなものはなく、胴体の横に付いた2対の機銃だけが頼りだ。
  敵MSを破壊するには心もとないが、オートマトン程度なら事足りると思ったのだが      .

  「・・・多すぎる・・・」
  呟きながらも、は引鉄を引き続ける。


  オートマトンが数機、トレミー内部へ侵入していく。

  やはり、以前のようには飛べない。
  機体性能も違うが、それ以上に自分の操縦能力の低下が著しい。

  は、ちらりと預かった花に目をやって、ぎゅっと眉を寄せた。
  「・・・それでも!!」
  これ以上のオートマトンの進入を防ぐため、は必死で引鉄を引き続けた。





















  「オートマトンが隔壁を突破! 進入されたです!!」
  「フェルト!」
  「ヴェーダを発見しました!!」
  フェルトの返答に、スメラギは、ほっと息を吐いた。
  「マイスターに転送します!!」
  フェルトに頷いて、スメラギは席を立った。

  も言っていたが、もう自分にはブリッジで出来ることはない。
  マイスターたちは、戦術通り各機散開して突入を試みている。
  内部に侵入してMSによる白兵戦を仕掛けてでも、ヴェーダを取り戻す、もしくは破壊するつもりだ。


  「ブリッジへ通じる隔壁が破られたです!!」
  ミレイナの報告に、スメラギはシートの下に設置されている銃を取り出した。
  こんなものでは心もとないが、それでも自分に出来ることをする必要があった。

  スメラギは、ブリッジの扉を開けた。

  「スメラギさん!!」
  フェルトの声に、スメラギは振り返った。
  先ほどのと同じように、微笑を浮かべてみせる。

  「フェルト、ミレイナ、戦術通りに対応して」
  「・・・分かりました」
  「はいです!」
  答えるオペレータ二人に微笑んで頷いて、スメラギはブリッジの扉を閉めた。

  構えた銃をしっかりと握り締めて、突入してくるオートマトンを迎え撃とうと歩を進める。
  「守ってみせる、今度こそ!!」
  決意を込めて、スメラギは呟いた。


  通路の先、向かってくるオートマトンに向けて、真っ直ぐに銃を構える。
  あの通路の先、角を曲がって・・・・・・

  「!!!?」

  現れたオートマトンを撃ち倒そうと思っていたスメラギは、驚愕に目を見開いた。

  「・・・・・・・・・ビリー・・・・・・」

  こんなところにいるはずがない、いてはいけない人が、そこにいた。

  「・・・クジョウ・・・」

  ゆっくりと、ビリー・カタギリはスメラギに向かって銃を構えた。





















  トレミーを守っているアレルヤとソーマも窮地に立たされていた。
  「!! 粒子残量が!!」
  アリオスから離れて戦うGNアーチャーの粒子残量が急激に減っていた。
  このままでは、GNアーチャーが機能停止に追い込まれる。
  そうなる前に、アリオスと再度ドッキングをして、GN粒子をチャージする必要がある。

  【マリー、ドッキングを!!】

  アレルヤからの通信が入る。

  しかし、敵MSの攻撃が絶え間なく、ドッキングする余裕もない。

  向かってきたMSに対して銃を撃とうとして、ソーマは息を呑んだ。
  粒子残量が、底をついていた。

  【マリー!! っく!!!】

  向かってきたMSをソーマの代わりに、アレルヤが撃ち落した。
  だが、その後続がGNアーチャーに突っ込んだ。
  特攻兵器である敵MSが、GNアーチャーを捕らえたまま、爆発した。











  アレルヤの悲鳴を、は聴いた。

  「・・・・・・くそっ!!」
  呟いて、は機首を返した。

  オートマトンよりも、向かってくるMSの方が脅威は大きい。
  トレミーを捕らえられたら、それこそ一発で致命傷を与えられかねない。
  オートマトンなら、まだ内部の隔壁で食い止められるかもしれない・・・・・・
  何よりも、ラッセが心配だった。
  ソーマが、アレルヤが戦えなくなれば、それだけラッセの負担が大きくなる。

  「・・・ラッセ!!」

  試作機の武装では心もとない。
  それでも、は機首をMSが向かってくる方へ向けた。





















  ヴェーダを見上げて、リボンズ・アルマークは呟いた。
  「人類は、試されている。滅びか、それとも再生か・・・・・・」

  「だが、それを決めるのは君じゃない」

  「?!」
  自分しかいないはずのこの場所で聴こえた別の声に、リボンズは振り返った。

  「・・・ティエリア・アーデ!!?」

  リボンズの視線の先、銃を構えたティエリアの姿があった。
  フェルトが割り出したヴェーダの位置情報から、セラヴィーを降りて単身敵母艦への進入に成功したのだ。

  リボンズは、不機嫌に眉間を寄せた。
  「・・・ティエリア・アーデ、君はイノベイターの分際で      

  「違う! 僕たちは、イノベイターではない!
   僕たちは、イノベイターの出現を促すために、人造的に生み出された存在、イノベイドだ!!
   ・・・ヴェーダを返してもらうぞ! リボンズ・アルマーク!!!」

  ティエリアの言葉に、リボンズは嘲笑を浮かべた。


  「ふ・・・そのイノベイドが進化を果たしていたとしたら?」

  「何?!」

  「僕はイノベイドを超え、真のイノベイターすら凌ぐ存在となった」
  「世迷言を!!!」
  不敵に笑うリボンズに向かって、ティエリアは銃を構えなおした。

  次の瞬間、銃声が鳴り響いた。


  「・・・言ったはずだよ? 僕はイノベイターをも超える存在だと」


  何が起こったのか       気付けば、リボンズの手に銃が握られていた。

  再び銃声が響き、また体が勝手に撥ねた。
  自分の体が、意識が、感覚が、遠い      .
  (・・・ヴェーダを通して、僕を支配下に置いている・・・・・・?)
  撃たれるたびに、その反動に体が勝手に宙を漂っていく。
  痛みすら感じず、ティエリアはイノベイターの姿を網膜に映した。


  「ヴェーダは渡さない」

  一層浮かべる笑みを濃くして、イノベイターは唇を吊り上げた。


  「そうさ、人類を導くのはこの僕だ」


  銃弾がヘルメットを貫く音を聴いたような気がした。

  ティエリアの意識は、ぷっつりと途絶えた。
















Photo by Microbiz

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