「本艦は、進入ルートを探査しつつ前進。ガンダム各機は、砲台を叩いて進攻ルートを確保!」


  敵母艦の表面に無数にある砲台から、絶え間ない攻撃がトレミーへと降注ぐ。

  「くそっ! キリがない!!」
  ラッセがトレミーの引鉄を引きながら吐き捨てた。
  は放たれる敵母艦の攻撃を避けながら、距離を詰められないことに苛立っていた。
  トレミーのブリッジに警報音が響く。
  「大型砲台が、こちらを捉えました!!」
  「!!」
  フェルトの報告に、スメラギが叫ぶ。
  可動式の砲台が、真っ直ぐにトレミーを狙っている。
  「了解!!」
  答えてが舵を切る。
  ブリッジが揺れる。
  再び放たれた巨大な光の濁流の渦をトレミーは今度も避けきった。

  「進入ルートは?!」
  安堵の息を吐く前に、は背後に尋ねた。
  「まだです!」
  答えるフェルトの声にも、安堵の色はない。
  ガンダム各機の攻撃で、敵母艦の小型ミサイルはどんどん減ってきてはいる。
  だが、元々の数が多い分、なかなか付け入る隙が見つからない。

  「進攻ルート上にある敵粒子砲、57%排除です!」
  ミレイナの手元で、再び警告音が鳴る。
  ミレイナの顔が強張った。
  「!!! 新たなMS部隊が来たです!!」
  「      !!」

  敵母艦から次々と発進してくるMSのその数に、は表情を厳しくした。

  「まだ新型があんのか!!? しかも大量に!!」
  隣で、ラッセも悲鳴を上げた。
  うようよと、まるで巣から飛び出す蜂の群れのような有様に、生理的な嫌悪を感じる。
  黒々とした虫塚のような大群が、トレミーに向かってくる。

  「・・・あの形状・・・・・・まさか!!!?」
  何かに気付いたスメラギが息を呑んだ。

  MSの大群が、突如紅い光を纏った。

  「嘘っ!!?」
  「トランザムだと?!」
  一気に加速して突っ込んでくるMS隊に、が叫んだ。
  ラッセも顔を引き攣らせている。

  あれだけ大量の機体がトランザムで、このトレミーに襲いかかって来る       その事実に呻いた。
  ラッセの砲撃だけでは、これだけの数には対応しきれない。
  ガンダム各機も、一旦トレミーを守るように後退して、大量のMS隊に対応しているが、それくらいでは到底捌き切れない。

  「敵MS、真っ直ぐこちらに向かってくるです!!」
  ミレイナが悲鳴を上げた。
  減速無しでトレミーに向かって突っ込んでくるMS隊に、スメラギは自分の予測に確信を持って呟いた。
  「・・・やはり、特攻兵器!! 右舷に砲撃を集中して!!」

  数が多すぎる。
  右舷で多数の爆発が起こり、トレミーが激しく揺れた。
  ブリッジに悲鳴が漏れる。
  ガンダムと、トレミーの攻撃だけでは、とても撃ち落し切れる数ではない。
  今はGNフィールドで何とか持ちこたえているが、それもいつまでも持つか・・・・・・

  「フェルト!! 進入ポイントは!?」
  「まだです!!」
  フェルトも焦った声で答える。

  スメラギは唇を噛み締めた。
  このままでは、トレミーのGNフィールドもいつまで持つか分からない。
  突破されるのも時間の問題だ。
  トレミーを爆発の揺れが襲い続ける。


  「?! スメラギさん!!」

  の声に、スメラギは顔を上げた。
  そして気付いた。
  先程よりも、ブリッジの揺れが収まっている      .

  「何?!!」
  攻撃が緩まったのか? いや、そんなわけが      .

  「カタロンと連邦・・・クラウスとマネキンが助勢に!!」
  「カタロン・・・カティ!!!」

  【何をしている、クジョウ。早く任務を遂行しろ!!】
  カティ・マネキンの怒声が響いた。
  「カティ・・・!!」
  この窮地にカタロンと連邦軍が、カティ・マネキンが、宿敵であるはずのソレスタルビーイングを助けてくれた。
  (・・・きっと、いつか、分かり合える日が来るはず・・・・・・!!)
  スメラギは思わず溢れそうになった涙を堪えた。


  「発見しました!! 管制用ドッグの入口です!!」

  フェルトの報告に、スメラギは大きく頷いた。
  今は感動している時ではない。

  「トランザムで一気に加速!! 突入するわよ!!!」

  いよいよ敵母艦に乗り込む。スメラギは顔を上げて、前を睨んだ。





















  「っあ〜!! めんどくせぇ!!!」
  叫びながら、カイウス・は引鉄を引いた。
  先ほどから途切れることなく向かってくるMSの大群に、いい加減厭き厭きしていた。
  「うぜぇよ!!」
  喚きながらも標的を外すことなく、カイウスはMSの破壊を続けている。

  【泣き言言うなよ〜、カイウス・・・俺だって、もう厭きたぁ!】
  「てめぇも泣き言言ってんじゃねぇよ!」
  【でもよぉ・・・これだけ数多い上に、全部特攻兵器って酷くねぇ?】
  「だから! 倒す必要があるんだろうが、よっ!!!」
  【あ〜、それもそうか・・・】
  コーラサワーと他愛もないことを言い合いながら、二人とも的確にMSを撃ち落し続けている。
  さすが、AEUの元エースたちだ。

  カイウスはソレスタルビーイングの母艦に目を向けた。
  (・・・・・・生きて戻れよ・・・)

  ブレイクピラー事件の際に、MA−3Aが飛んでいたと、旧友たちが口を揃えて証言した。
  アロウズなんかにいるわけがない。
  今回の共闘で、カタロンにもいないことがはっきりした。
  となると、消去法で残る可能性は一つ       ソレスタルビーイングだ。

  ソレスタルビーイングの母艦を見つめて、カイウスはニヤリと笑った。


  【あ!!!】
  「? おいっ?!!」
  突然、共に戦っていたコーラサワーの機体が方向転換した。

  【俺の大佐にぃぃ!!】

  カティの乗る指揮艦に、特攻兵器が接近していた。
  「コーラサワー!!」
  敵MSをカイウスに押し付けて、コーラサワーは単機カティの元へ戻っていく。

  【手を出すなぁ!!!】

  叫んで、コーラサワーが特攻兵器を撃墜した。
  「あいつ!!!」
  後続の特攻兵器が、コーラサワーの機体に取り付いていく。

  【・・・大好きです、カティ・・・】

  コーラサワーの機体に取り付いた特攻兵器が爆発した。


  「馬鹿ヤロウ!!!!!」

  特攻兵器に巻き込まれ爆発するコーラサワーの機体に、カイウスは叫び声を上げていた。








     >> #23−3








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