【敵部隊を牽制する!】
【いけぇ!!】
【圧縮粒子、全面解放!!】
【いけるぜ! この新装備!!】
アレルヤとソーマは抜群のコンビネーションで敵機を翻弄し、ティエリアとロックオンは新装備で敵を撃墜していく。
一見有利に見える戦局の中で、がスメラギを振り返った。
「敵艦3隻が針路を変えない!」
「何ですって?!」
後方で指揮を取るはずの敵艦が、MS隊を発進させた後も針路を変えることなくトレミーに向かってきている。
「敵艦、減速無しです!!」
ミレイナの報告に、ラッセも舌打ちを漏らした。
「特攻か!!?」
「くっ・・・・・・・・・刹那、ライザーソードで敵艦隊を!」
【了解!! トランザムライザー!!!】
スメラギが刹那に指示を出した。
ダブルオーライザーの巨大なビームサーベルが、迫ってきていた敵艦3隻を一気に切り裂いた。
爆発の煙とは別に、細かい塵のような煙が上がった。
煙はガンダム各機を、トレミーを巻き込み、宙域一体に広がる
【粒子撹乱かっ!!?】
「・・・マズイわね・・・」
広がる煙に、が眉を寄せた。
「アンチフィールドが、広域に展開されたです!!」
「粒子ビームの効力が低下!!」
ミレイナとフェルトも表示される数値に、焦った声をあげる。
「!? 罠かよっ!!」
「至近距離で展開されなかっただけマシよ!」
ラッセが思わず漏らした言葉に、スメラギが反論した。
ラッセに、というよりも自分に言い聞かせるように言葉にして、スメラギはアンチフィールドを睨みつけた。
「起動変更! フィールドを脱出して!!」
「了解!」
答えて、ラッセが舵を切った。
「アロウズ、主力部隊が来た! スメラギさん・・・」
敵部隊から次々と投入されるMSに、がスメラギを振り返った。
の視線が、スメラギに尋ねている アタシがMAで出撃しようか? と。
スメラギは、首を振った。
右耳が聴こえない、まだ怪我だって癒えていないに、出撃させたくなかった。
命を犠牲にしてきて、と言うのと同じだ。そんなこと、言いたくなかった。
(・・・・・・まだよ・・・まだ、そのときじゃないわ・・・・・・)
それを言うのは、最後の最後だ。いや、最後の最後でも、言う気はない。
このアンチフィールドの中では、ガンダムの力は半減、いや、1/3も発揮できないだろう。それでも .
何か言いたそうな顔をしたまま、は視線を前へ向けた。
苦戦は強いられているが、それでも、マイスターたちは善戦している。
それも長くは続かないだろう。
だけど .
【突破された!!】
「MS隊、来たよ!!」
ロックオンの声との声が重なった。
「ラッセ!!」
「任せろ!!」
スメラギの声に短く応えて、ラッセがトレミーのミサイルを発射させる。
突っ込んできたMSが、ミサイルの餌食になっていく。
けれど、次から次へとアロウズのMSがトレミー目掛けて、攻撃を仕掛けてくる。
「くそっ!! 数が多すぎる!!!」
「耐えるのよ!!」
「GNシールド、30%を切った!! 突破される!!!」
「っく・・・・・・!!!」
アンチフィールド内で効力の低下したGNシールドを突き破ろうと、アロウズのMSが攻撃を集中させている。
(このままでは )
「きゃッ!!?」
ブリッジが大きく揺れた。
とうとうGNシールドを突き破られて、トレミーが直接攻撃に曝されたらしい。
「左舷に被弾!! 損傷はっ!!?」
フェルトが必死に報告しようとするが、またもや大きな衝撃がトレミーを揺らす。
続く砲撃に、大きな衝撃が連なり、まともにモニターを見続けることすら難しい。
「・・・・・・くっそぅ!! なぶり殺しかよっ!!!」
ラッセも声をあげた。
激しい衝撃に、引鉄を引くことすらままならない。
「っぅ・・・・・・」
も息を詰めた。
衝撃に、傷ついた三半規管が悲鳴をあげている。
「・・・・・・・・・」
スメラギも必死で耐えていた。
何とかしないと .
警戒を告げる電子音に、ミレイナが叫んだ。
「敵機接近です!!」
スメラギは顔を上げた。
ブリッジの、トレミーの船橋の前に、ジンXが立ち塞がった。
至近距離だ。
避けることは叶わない。
間に合わない。
銃口が向くのが、酷くゆっくりに感じられた。
ミレイナは、咄嗟に体を丸めた。
フェルトは、恐怖を感じながらも、それでもジンXから目を逸らさなかった。
ラッセは、のことを想った。
は、ラッセの傍にいられたことに微笑を浮かべた。
スメラギは、ジンXを睨みつけた。
「?!!」
一瞬だった。
突然、真横からの一撃がジンXを爆破した。
「何?!!」
突然のことに驚くラッセたちの中で、戦術予報士が安堵の息を吐いた。
「来てくれたのね!! カタロン!!!」
爆発に照らし出されたブリッジで、スメラギがその顔に微笑を浮かべた。
【援軍!!】
【カタロンか!!】
【よく来てくれた!! いいタイミングだ!!】
ガンダムマイスターたちの声が聴こえた。
トレミーに迫っていたジンXを撃ち落した機体が、トレミーを掠めるようにして飛んでいく。
「?!! あれは 」
その機体を見て、が息を呑んだ。
「 GNS?!!」
見慣れた機体だった。
見慣れたどころではない。手足のように駆っていた機体だ。
色や形に違いは見受けられるが、間違えるはずがない。
あれは、の名前の元になったMA−3Aだ。
「おい、あれって・・・・・・?!」
ラッセも気付いて、窺うようにに視線を向けた。
【ボヤボヤすんじゃねぇよ!! 俺が喰っちまうぜ!!!】
縫うように、滑るように、アロウズのMS隊の間を飛びながら、敵機を破壊するMAから聴こえた声に、が苦笑を浮かべた。
「っはは・・・兄貴だ・・・・・・」
「マジかよ・・・」
ガラの悪そうな雰囲気に、ラッセも引き攣った笑いを浮かべた。
「・・・・・・、カイ・・・彼もカタロンに?」
スメラギの質問に、は首を振った。
「4ヶ月前までは間違いなく連邦軍だった・・・・・・カタロンに入るなんて、信じられない・・・あの兄貴に限って・・・」
権力を嫌いながら、それを有効利用することに抜け目のない人だ。
そんな人が、連邦軍を首になったからといって、反政府組織に参加するとは考えられなかった。
続々とカタロンのMSもMA−3Aを追いかけて戦場に突入している。
その全てが、アンチフィールドに影響を受けない武装をしている。
「・・・それに、カタロンの武装・・・アンチフィールドを予想していた? ・・・・・・だとすると!!」
ぶつぶつと何か考え込んでいたスメラギが、ばっと顔を上げた。
「トレミーを敵艦隊へ!!」
スメラギは確かな確信を持って、トレミーを敵の指揮艦へと向けた。
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