突然、後方の輸送艦が、味方のはずのアロウズ艦隊に向けて、粒子ビームを放ってきた。
明らかに敵意を持って発せられた攻撃に、アロウズの艦隊はパニックに陥りつつあった。
さらに、そこに通信が響き渡る。
【アロウズ艦隊に勧告する。我々は決起する。悪政を行う連邦の傀儡となったアロウズは、もはや軍隊ではない!!
世界の行く末は、市民の総意によってのみ決められるものだ。
我々は、貴様らの蛮行を断罪し、市民にその是非を問う!!】
「あんの女狐めっ!!!」
指揮艦に乗っていたアーサー・グッドマン准将は、聞き覚えのある声に歯噛みした。
ソレスタルビーイングを殲滅する作戦の、一番大切なこの場面で、味方に反乱分子が紛れ込んでいたなど、あってはならないことだった。
「カイウス!! お前、一人でずるいだろうがっ!!」
【はん!! 言ってろ、コーラサワー。ここは、俺だけで充分だぜ!!】
「何だと〜!!!」
久しぶりの戦場のはずなのに、友人はまったく衰えの見られない腕前で、自在に宙を駆け回っている。
ずっと情報部のデスクワークで、相当なブランクがあるはずなのに、その男はそんなものを微塵も感じさせない。
それどころか、一人で充分と豪語して遜色ないだけの腕前を披露している。
(まるで、水を得た魚のようだ ・・・)
パトリック・コーラサワーは、華麗に苛烈に戦場を駆けている男 カイウス・を見ながら、そう思った。
自分がAEUのエースになる前は、カイウスの妹で、カイウスが操縦を指導したレジーナ・がエースだった。
そして、それ以前にず〜っとエースの座にいたのが、今目の前を飛ぶカイウス・だ。
あの頃は、まともに勝負しても勝てなかった。今だって、勝てるかどうか分からない。
コーラサワーは、わくわくする自分を止められなかった。
(・・・俺だって!!!)
カイウスを抜き、カイウスを感嘆させてこそ、真のエースだ そんな闘争心が、むくむくと湧き上がって来る。
それを見透かしたように、カイウスから笑い声交じりの通信が入る。
【てめぇは、カティのことだけ守ってりゃぁ、いいんだよ!!】
「もちろんだ!! だけど、俺だってなぁ!!!」
【愛した女を守ってこその、男だろが?】
カイウスの言葉に、コーラサワーは不満げに口を曲げた。
「だったら、カイウスは何なんだよ?」
【あ? 俺か? ・・・・・・俺は、大事なもんが大事にしたいと思ってるもんを守ってんだよ!】
「わかんねぇよ!! 第一、カイウスが一番大事にしてんのは、妹じゃんかよ!!?」
【だから、癪なんじゃねぇか、よ!!!】
また一機、カイウスが敵MSを撃墜する。
さっきから無駄口ばかり叩いているようだが、カイウスもコーラサワーも動きを止めずに攻撃を続けている。
撃ち落した敵機の数が、カイウスの方が多いのもコーラサワーには不満だった。
撃った弾数なら、多分コーラサワーの方が多いのも、納得いかなかった。
「・・・やっぱり、アレを狙うか・・・・・・できる男は、大物を狙わないとな!」
コーラサワーは、アロウズ艦隊の真ん中に居座る指揮艦に目をつけた。
【やめとけ。巻添え食うぞ】
コーラサワーの考えを読んだかのように、カイウスが呟いた。
「? 何言って !!!」
コーラサワーが指揮艦に突っ込もうとしたその時、アンチフィールドを抜け出してきたソレスタルビーイングの母艦が目に映った。
そして、一緒に飛び出してきた二個付きガンダム .
【言っただろ?】
笑いを含んだカイウスの声が聴こえた。
ダブルオーライザーの一撃が、敵指揮艦を打ち破った。
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