ラッセの心音を感じる       は、ゆっくりと息を吐いた。

  たとえこの耳が聴こえなくなっても、その鼓動を感じられることが、とても幸せだった。











#22 未来のために











  「ヴェーダのある場所が分かっただと?!」
  「ああ。王留美からの情報だ」
  「ヴェーダが見つかった・・・!!」
  アレルヤが喜びを顕にした。

  ヴェーダを奪還できれば、この戦争は終結へと向かう。

  ブリッジにはラッセ、、ソーマを除くメンバーが集まっていた。
  刹那が持ち帰った紙片に書かれていた情報を分析していたフェルトが、スメラギを振り返った。

  「暗号解析、終了しました。ポイントはCZ9842R、月の裏側です!」
  「ミレイナ、超望遠カメラでポイントを」
  「了解です!」
  スメラギの指示に、ミレイナが答える。

  CZ9842R      .
  「・・・ラグランジュ2?」
  「コロニー開発すら行われていない場所だ・・・隠れるにはうってつけだなぁ」
  アレルヤの疑問に、イアンが答える。

  「ポイント、表示するです」
  皆が、足元のモニターに視線を落とした。
  CZ9842Rの映像が、真っ暗な宇宙空間が映し出された。


  「・・・・・・何もないぜ?」
  ロックオンが訝しげに呟いた。
  映し出された映像に、ヴェーダがありそうな気配はない。
  イアンの言うとおり、コロニー開発すらされていない真っ暗な星宙が広がっている。

  映像を眺めながら、何かを考えていたスメラギが、ミレイナに声をかけた。
  「・・・この位置からの、天体図を画像に重ねて」
  「はいです!」

  「ん?! なんだ?!!」
  「・・・星の位置が、ずれている?」
  驚くイアンに、アレルヤが呟いた。

  「光学迷彩ね・・・フェルト、ズレのある距離を算出して」
  「了解」
  早速フェルトが作業を開始する。
  「・・・・・・距離は・・・!! 直径15キロです!!」
  「15キロだって?!!」
  「そこまで隠すほどの物体が・・・・・・?!」
  「月の裏側にある・・・・・・」
  ティエリアが呆然と呟き、刹那も足元の映像に視線を落とした。


  電子音が鳴り、フェルトがモニターに視線を戻した。
  「! スメラギさん!! ラボの輸送艦より、暗号通信です!!」
  「ママァ!!!」
  「新装備が来たか!!」
  スメラギよりも先に、ミレイナとイアンが反応した。

  ヴェーダを奪還するための準備が、着々と整いつつあった。











  「戦力になりそうなものは、全て持ってきたわ! ガンダム各機のパワーアップパーツに、トレミーの補給物資」
  トレミーに接舷したソレスタルビーイングのラボ船から、続々と物資が運び込まれている。
  にっこりと微笑むリンダの横で、ミレイナだけでなくイアンまでもが子供のように目を輝かせた。

  「おぉ!! オーガンダムまで!!」
  運び込まれようとする荷物に、懐かしいものをみつけて、イアンが声をあげた。

  旧世代の機体で、現行のガンダムのモデルにもなったものだ。
  操作性や機能的な面から、実戦から遠ざかっていたが、戦力になりそうなもの全て、という範囲に含まれ、今回持ってきたのだろう。
  「粒子貯蔵タンクをつけたから、一定時間の戦闘は可能よ!」
  「そいつは凄い!!」
  リンダの説明に、イアンは目を輝かせた。

  「ママ、あれは?」
  ミレイナの視線の先、トレミーに運ばれる荷物に、イアンは目を丸くした。
  「試作機まで持ってきたのか?!」
  「ええ。だから、使えそうなものは、全部持ってきたのよ」
  にっこりと微笑む妻に、イアンは唸った。

  まさか、旧世代時代の実験的機体       GNアーチャーやアリオスガンダムの飛行形体、オーライザーのモデルとなったMA       まで持ってくるとは、さすがは自分を旦那に選んだ女だ。
  ひとしきり感心してから、イアンは気合を入れて振り返った。

  「よぉし!! 急いで搬入するぞ!!!」
  「はいですぅ!!」

  元気よく答えた娘と、嬉しそうに微笑む妻に、イアンはさらにやる気を燃え上がらせたのだった。








     >> #22−2








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