「・・・アニューは小型挺で脱出するか・・・」

  格納庫にいたソレスタルビーイングの整備士を殴り倒して、リバイブ・リバイバルは当初の計画通り、オーライザーのコックピットに収まった。
  本来なら、アニューがダブルオーを奪取するはずだったが、仕方ない。

  オーライザーのシステムに戸惑いつつも、何とか起動を完了させたリバイブは、第三ハッチからプトレマイオスを飛び出した。
  後部ハッチから脱出するはずのアニューを確認しようと、後方に意識を向けた瞬間      .

  「      !!?」
  咄嗟にリバイブは機体に回避運動をとらせた。

  リバイブの乗るオーライザーに接触しそうな距離で、いきなり突っ込んできたMAが旋回した。
  ほんの一瞬でもリバイブの反応が遅かったら、ぶつかっていたかもしれない       それほどの近距離だった。

  「一機出ていたか・・・しかし!!」

  リバイブは、にやりと笑った。

  今リバイブが乗っているのは、ソレスタルビーイングにとって、切り札とも言える大事な機体だ。
  艦のシステムは落ちていた。異常を外にいたMAが知ることは出来ない。
  ならば、オーライザーに乗っているのが敵だと、MAのパイロットは知らないはずだ。
  唯でさえ大事な機体、それを傷つけるようなことはないはずだ。
  MAがオーライザーを攻撃することはない。
  ならば、その隙に、撃ち落としてしまえばいい。

  だが、旋回するMAの背中に狙いをつけようとしたリバイブの読みは裏切られた。
  MAは即座に機首を返して、オーライザーに向かって発砲した。

  「!!?」

  威嚇ではない。
  明らかにオーライザーを狙って放たれた銃弾に、リバイブは驚愕の表情を浮かべた。

  「何なんだ?! こいつは!!」

  敵だとバレているのか?! まさかっ!!?       リバイブの乗るオーライザーに、銃弾が掠める。

  リバイブは、表情を引き締めた。
  何らかの方法でMAのパイロットは、オーライザーが敵に奪われたと気付いた       そうとしか考えられない。
  しかも、このパイロットは、大事な唯一無二のオーライザーを攻撃することを躊躇っていない      .

  「ならば、こちらも!!」

  リバイブは、オーライザーの引鉄を引いた。

  「!? 何!!!?」

  発射されたミサイルを全て避けて、MAはさらにオーライザーへの攻撃の手を休めない。
  人間が操縦しているにしては機敏な反応をするMAに、リバイブは真剣に、撃墜することだけに集中しようと気持ちを切り替えた。











  「っち!! 外したかっ!!!」
  は引鉄を引いた。
  オーライザーは、その攻撃を全て避け、GNSに向かって機銃を撃つ。
  もそれをかわしながら、再び引鉄を引く。

  乗っているのがソレスタルビーイングの人間でないことは、最初の旋回時にすぐに分かった。
  マイスターたちの操縦の癖は知っている。咄嗟の動きは誤魔化せない。
  の最初の突撃を避けた動きで、マイスターではないと判った。
  無論、沙慈や他のメンバーでもない。
  彼らなら、反応することすら出来なかったはずだ。もちろん、は相手が沙慈でも、避ける自信があったのだが。

  ならば、消去法で、答えは一つしかない       乗っているのは敵だ。
  今まで通信を入れてこないのが、何よりの証拠。

  は引鉄を引いた。
  もちろん、大切なオーライザーをスクラップにするつもりはない。
  なるべく、損傷が少なくて済むように       だが、そんなことを考慮して引鉄を引いているから、狙った攻撃は先ほどから効果をあげていない。
  本気で撃墜するつもりでやらないと落とせないような、そんな敵がオーライザーを操っている      .

  「・・・イノベイターがっ!!!」

  苦々しく呟いて、は引鉄を引く       外された!
  急上昇、旋回して、オーライザーから放たれるミサイルをかわしながら、はトレミーの後部ハッチから、小型挺が発進するのを見た。

  「・・・いい加減に!!」

  再び機首を下げて、オーライザーに突っ込みながら、引鉄を引く       かわされた!
  オーライザーの横を飛び抜けながら、は機体の舵を切った。
  すぐ後から、オーライザーのミサイルが追ってくるのを、旋回しながらかわしきろうとするとき、通信機が鳴った。

  【・・・さん】
  「アニュー?! トレミーは?! 状況はどうなってるの?!!」

  トレミーのブリッジの通信が回復したのだと思った。

  GNSに、映像機器は搭載していない。
  音声のみの通信に、はブリッジにいるだろうアニューに向かって、問いかけた。

  【・・・・・・イノベイターがトレミーのシステムを掌握しました】

  「みんなは無事?!」
  かかるGに耐えながら、が尋ねる。

  しばらく間をおいて、アニューが答えた。


  【・・・・・・・・・ラッセさんが撃たれました】

  「え・・・」

  【イノベイターである私、アニュー・リターナーによって】


  瞬間、すべての音が消えた。











  「      やった!!」
  突如動きの鈍ったMAに、オーライザーが放ったミサイルが命中した。
  黒煙を上げるMAに向かって、リバイブはさらにミサイルを撃ち込んだ。

  反撃に転じるかと思ったが、MAはそれまでの動きが嘘のように沈黙している。
  操縦者か機体に致命的な損傷を与えたか       ならば、これ以上の攻撃は無用と判断し、リバイブは小型挺で脱出してきたアニューに向かって通信を開いた。

  【ごめんなさい。しくじったわ】
  「言い訳はリボンズにしなよ」

  随分と脱出に手間取った。
  予定になかったMAとの戦いに、余計な時間を使わされたことを、リバイブは苦々しく思った。

  腹立ちを紛らわすために、リバイブはもう一発、MAに向けてミサイルを撃った。
  小さな爆発があり、新たな黒煙がMAから上がる。
  それを満足気に見やって、リバイブは小型艇とともに、宙域の離脱を開始する。

  「ガンダムが来るか・・・・・・」

  余計な時間を使わされた分、その可能性が高くなったことを気にしながら、リバイブはトレミーに背を向けた。








     >> #20−4








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