「GNフィールド最大展開!」
  「トレミー潜水モード!!」
  「海に突っ込む!!!」
  「総員、衝撃に備えてっ!」
  の声と衝撃が来るのとほぼ同時だった。

  トレミーごと大気圏に突入し、そのまま減速せずに海に突っ込んだのだ。
  その衝撃は凄まじかった。
  そうしないと、空母の粒子ビームの威力を抑える程に湿度を高められないし、何よりも電撃作戦には混乱が必要だ。
  発生させた津波でアロウズ部隊が混乱するほどの      .
  (      っ!! それにしたって、予想以上の衝撃っ!!!)
  衝撃後、息をつく間もなく、トレミーに向けて発射される機銃掃射から逃れるように舵を切る。

  「刹那、ティエリア、粒子ビームの拡散時間は約300秒、その間にアレルヤを!」
  【了解、3分でやる】
  フェルトの指示に、上空から降下するセラヴィーとダブルオー       刹那から返事が来た。

  【残りの2分でもう一人を助けたらどうだ】
  【マリナ・・・】
  ティエリアの言葉には微笑んだ。
  素早く情報を確認し、それをダブルオーに転送してやる。
  (      アザディスタンの第一皇女様、ね・・・・・・本物の"女王"ってわけか・・・)
  マリナ・イスマイールの収監されている部屋の位置がダブルオーに届いたことを知らせるアイコンが出る。
  (ま、余計なおせっかいよね・・・)
  海上の様子をモニタリングしながら、は秘かに微笑んだ。

  「連邦側よりMS発射を確認」
  【ここは死守する!】

  収容施設内へ突入した刹那とダブルオーを守るセラヴィーへ、アヘッドが向ってくる。

  「ケルディム、抗狙撃戦開始だ! 中てなくてもいいから牽制しろ」
  【了解】
  ラッセの指示に、軽い調子でロックオンが答えた。


  「・・・・・・大丈夫か?」
  通信を切って、ラッセが心配そうに呟いた。

  は、こっそりと唇を歪めた。
  (・・・そっちは心配なし)
  「ケルディム、敵機を撃墜しました!」
  の期待に答えるように、フェルトが戦果を告げる。

  「・・・素人じゃなかったのかよ?!」
  驚くラッセに、【まぐれ、まぐれ】と軽い調子でロックオンから通信が入る。はまた笑った。
  (よく言うわ、まったく)
  苦笑を誤魔化すように、先ほどハッキングした収監者の情報を一瞥する。
  カタロン構成員の名前が散らばっている。
  (・・・捕まってはいない、か・・・       !!?)
  「     そんな・・・」
  「・・・・・・どうした?」
  「・・・・・・何でもない」
  思わず漏れた声をラッセに聞かれた。
  平静を装って、は素早く開いていたリストを閉じた。

  収監者の一覧の他に、収監施設の責任者や作戦指揮者、アロウズに所属する軍人のデータを一瞥しておこうと思った。
  そこに、知っている名前を見つけてしまった。
  (      カティ・マネキン・・・・・・あなたまでアロウズに・・・・・・)
  は表情を引き締めた。

  敵の指揮をとっているのがマネキンなら、油断は命取りになる。

  ラッセが、気遣うようにをちらりと見て、再び前を向いた。
  その横顔に、心の中でゴメン、と呟く。
  (      アタシは、秘密が多すぎるよね・・・・・・)

  【アレルヤを発見した! アリオスを!!】
  砲撃に耐えるセラヴィーからの通信に、ラッセが浮上のため舵を取る。

  「ばっちりです! アリオス射出です!!」
  ミレイナの操作で、無人のアリオスが指定されたポイントへ向けて射出される。

  「トレミー再潜航」
  海上に姿を現したトレミーに機銃の照準があう前に、再び海中へとラッセが舵を取る。

  「GNミサイルで牽制しつつ、合流ポイントに移動する」
  「【残り120秒・・・3分経過】・・・・・・後は、マイスターたちね・・・」
  通信を切り替えて、は再びモニターに呼び出したアロウズの戦術予報士の名前を見つめた。
  (・・・・・・これは、スメラギ・李・ノリエガに、伝えた方がいいのかしら・・・・・・?)
  表示された名前の重さには溜息を吐いた。
  (・・・・・・聞いてない・・・まさか、兄貴も知らない? ・・・そんな筈ないか・・・・・・)
  見間違えるはずのない名前、その人物の能力の高さを思って、は再度溜息を吐いた。
  (転属は最近? ・・・・・・スメラギ・李・ノリエガには、あえてまだ伝えない方がいいかも、ね・・・・・・)


  「まさか、緊張してたのか?」
  「へ?」
  不意にかけられた言葉に、思わず間抜けな声を上げてしまった。

  それを軽く笑って、ラッセが口を開いた。
  「そんなわけないか、に限って」
  「・・・どういう意味よ?」
  馬鹿にされたような気がして、は唇を尖らせた。

  「溜息ばっかり吐くなよ。あいつらなら、全員無事に戻ってくるさ」
  「そうです! 皆さん絶対大丈夫です!!」
  突然割り込んできたミレイナの明るい言葉に、ラッセは「お?!」と一瞬驚いてから、表情を和らげた。
  「そうだな。あいつらなら、心配要らないさ。な?」
  そう言ってに向ってラッセが笑った。
  瞬間、自分の顔がガラにもなく熱くなるのが分かった。

  「【残り30秒】・・・・・・分かってます」
  誤魔化すように残り時間の連絡を入れた。

  通信機から顔を上げても、こちらを見て笑っているラッセにガラにもなく自分の心臓が音をたてる。
  (・・・・・・すっかり忘れてたけど、アタシ、告白めいたこと言っちゃったんだった・・・・・・)
  数時間前のやりとりを思い出して、は視線を泳がせた。

  ラッセの言葉に励まされ、心動かされて、気付けば絶対に言うつもりのなかったことを口走り、挙句にキスを      .
  (してない! してない!! 危なかったけど・・・・・・・・・素面でキスなんて出来るかっ!!)

  「【限界時間到達】・・・・・・まだ何か?」
  内心の動揺を誤魔化すように通信連絡を入れ、ラッセを睨んだ。
  顔が熱いのは気のせいだと言い聞かせる。

  「いや、それだけだ・・・・・・さてと、合流ポイントへ急ぐぞ」
  もう一度笑ったラッセに、ふいっと顔を背けてやる。
  そんなをにやりと笑って、ラッセは舵を握った。

  (・・・・・・明日から・・・ていうか、今からどんな顔して接すればいいの・・・・・・?!)

  「ガンダム離脱、撤退行動開始しました!」
  フェルトの声に、安堵の息に紛れ込ませて、は溜息をもう一度だけ吐いたのだった。
















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