「ん?」
  が宇宙へ出たのを見送って、ブリッジへ戻ってきていたラッセは不意に違和感を覚えた。

  トレミーの進路が、に伝えてある予定進路とずれていっている。
  このままでは、が帰還しようとしたとき、トレミーと合流出来ない可能性がある。
  近くを一周するだけだと言っていたので、おそらく問題はないと思うが、それでも艦の進路がずれるのは好ましくない。

  (アニューにしては、珍しいミスだな・・・・・・)
  そう思いながら、ラッセは隣に座るアニューに視線を向けた。


  「アニュー、予定進路から外れてるぞ。修正を」

  ゆっくりと振り返ったアニューが、ラッセに銃を向けた。

  「?!! アニュー!!?」
  アニューの瞳は冷静で、何が起こっているのか理解できなかった。


  焦るラッセの声に、それぞれ作業をしていたフェルトとミレイナも顔を上げた。
  そして、ラッセに銃口を向けているアニューに、二人は驚きに目を見開いた。
  何がどうしてこんなことになっているのか、理解できなかった。

  「リターナーさん?!」
  「何をするんですか?!!」

  フェルトとミレイナの言葉に、アニューは何を今更とでも言うように、気だるげに口を開いた。


  「何をする? ・・・そんなこと、決まってるわ。だって私は、イノベイターなんだから」


  あたり前のことを言うように、アニューはそう告げた。
  向けられた銃口が、まるで悪い冗談のようだ。


         ラッセ、愛してる      .


  不意に、大切な彼女の笑顔が脳裏を過ぎった。
  触れた唇のぬくもりを思い出した。

  (・・・・・・・・・!!)

  ブリッジに、銃声が響きわたった。
















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