「あの機体は・・・・・・」

  間違いなかった。
  あの機体を使うのは、マリーが知る限り一人しかいないはずだ。

  【マリー!!?】

  通信機から聴こえたアレルヤの声も振り切って、マリーはGNアーチャーをその機体に向けた。
  その機体       ティエレンタオツーが狙っていた破片を粉砕して、マリーはGNアーチャーをその隣に並べた。

  【協力を感謝する】
  「やはり! スミルノフ大佐!!」
  回線を通して聴こえてきた懐かしい声に、マリーは喜びの声を上げた。
  【ピーリスか?! 何故、MSに・・・!!?】
  「来ます!!」

  驚きを含んだその言葉を遮って、マリーは注意を空に向けた。
  一際大型の破片が、その姿を現そうとしていた。

  もう一度大佐と並んで戦場に立てることに喜びながら、マリーはその破片に向かって引鉄を引いた。





















  硝煙と粉塵に覆われていた空が、ようやく本来の姿を取り戻したのは、すでに夕刻だった。

  宇宙から急降下してきたダブルオーライザーやガンダム各機のトランザム、そして各勢力の協力によって、人口密集地域への被害は防がれた。

  全てが終わった今、カタロン部隊は、アロウズが支配するこの空域から離れだしている。
  今は追わない姿勢をとっているアロウズだが、それがいつまでも続かないことは、彼らを敵にしてきたものたちは身に沁みて分かっていた。

  も、さっさと機首を返した。

  (・・・・・・どれくらいの人間が、アタシが女王だと気付いただろう・・・・・・)

  連邦軍の、かつての同僚たちが大勢いるその上空で、あんな挑発的な飛び方をして気付かれていない       とは到底思えず、は溜息を吐いた。
  願わくば、気付いた連中がそれを各々の胸にしまっておいてほしい。


  【スミルノフ大佐!!!】


  通信機が拾った音に、は視線を巡らした。
  かつての人革連でロシアの荒熊と呼ばれた男が、そんな名前だったはずだ。
  (・・・確か、セルゲイ・スミルノフ・・・・・・)


  【ルイス!!!!!】


  視線が捉えたのは、アロウズ機と組み合う連邦軍機、そして、そこへ向かおうとするGNアーチャーと、それを阻もうとしてダブルオーライザーに撃たれたアロウズ機       アロウズと組み合っている連邦の機体は、クーデター派が乗っているのか      .


  【大佐!!!】


  GNアーチャーに乗るマリーの声が聴こえた。

  (・・・あれは、ティエレンタオツー・・・?)

  組み合っていたアロウズ機が、連邦軍の機体の動力機関部分に、その刃を突き刺した。
  ゆっくりと、まるでアロウズの機体を遠ざけるように離れた連邦軍の機体が、爆発した。
  人一人の命が消えるには、あまりにも呆気なく、微かな爆発音が視覚に刺激され、の耳にも届いたような気がした。

  (・・・共に人命救助に当たったとしても、アロウズにしたら敵は敵ってことか・・・・・・)


  【・・・た、大佐・・・】


  聴こえたマリーの呟きに、は息を呑んだ。


  【大佐ァ!!!!!!!!】


  マリーの絶叫が、茜色の空に響き渡った。
















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