「刹那、発見しました! アロウズ所属と思われるMSと交戦中!!」
  フェルトの報告に、すぐさまマイスターたちは各々のガンダムに飛び乗った。


  戦闘状態のそこへ、ティエリアは引鉄を引いた。
  発射された砲撃は、狙い通りダブルオーと敵機の間を切り裂いた。
  動きを止めた敵機は、向ってくるガンダム各機とトレミーに、状況を不利と見て取ったか、背を向けて離脱していく。


  「刹那!!!」
  去っていくMSを追わず、セラヴィーをダブルオーに寄せる。
  アリオスとケルディムもそれに倣う。

  「刹那!」
  「このやろう、生きてやがったか!!」
  アレルヤ、ロックオンの嬉しそうな呼びかけに、ダブルオーの回線が開く。
  【み、みんな・・・】

  「刹那?」
  その苦しそうな声に、ロックオンが眉を寄せた。

  【・・・みんなは、無事か・・・・・・?】
  「どうした、刹那?!」
  突然ダブルオーが力を失い落下した。

  「刹那!!」
  「刹那!!!!」
  ケルディムとアリオスが咄嗟に支えなければ、海へ墜落していただろう。

  【・・・分かっている、ロックオン・・・・・・ここで俺は変わる・・・俺自身を、変革させる・・・】

  「刹那・・・?!」
  微かに聞き取れた刹那の呟きに、ティエリアは驚きに目を見開いた。
  しかし、それっきり刹那は沈黙したのだった。





















  「お疲れ、イアン」
  「・・・お疲れさん・・・」
  何とか答えたイアンに苦笑して、はその場を後にした。

  アロウズの、イノベイターの動きが気になって仕方がなかった。
  焦る気持ちを何とか抑えて、平静を保ってみせてはいるが、とてもじっとなんてしていられない。


  「火気管制、使用できるよ。あんまり無茶はしないでくれって、イアンなら言うと思うけど」
  ブリッジへ足を踏み入れたの言葉に、スメラギが苦笑を浮かべた。

  「それが、出来ればね・・・・・・お疲れ様。イアンは?」
  「少し休ませてあげて。疲れ溜まってるみたいだから」
  肩を竦めたに、スメラギが呆れ顔で笑った。

  「、あなただって、病み上がりで全然休んでないんじゃない? 少し休んだら?」
  「イアンと違って、アタシはまだ若いから大丈夫。それより、クーデターの方は?」
  「もう・・・・・・この件が片付いたら、ちゃんと休みなさいよ?」
  「はいはい。で、どうなの? 何か動きがあった?」
  モニターを覗き込むに、スメラギが表情を硬くして頷いた。

  「ええ・・・連邦からの公式発表が出たわ。観る?」
  「一応。情報操作後だって、分かってるけど」
  答えたに、スメラギは先ほど流れたばかりの映像を再生した。

  【この映像は、独立治安維持部隊の無人偵察機が、アフリカタワー内部を撮影したものです      
  逃げ惑う市民たちに銃を向け、発砲する武装勢力の姿が映し出され、はその眉を寄せた。
  【反政府勢力は、ステーション内の市民たちの命を奪っています。連邦議会は、独立治安維持部隊の強行突破を検討しており      

  「・・・酷い映像ね」
  呟いて、は映像を止めた。
  「・・・こんなので、騙すつもり?」
  「知らなければ、連邦お得意の世論操作に踊らされるでしょうね・・・」
  スメラギも、溜息を吐いた。

  市民たちを守るように防壁を建てたのは誰なのか?
  どうして武装している人間が物影から隠れて民間人を撃っているのか?
  ちょっと冷静に考えれば、この映像がおかしいことは、すぐに分かる。
  だが、大多数の人間は疑いを持つことすらしないだろう。

  「ま、事実の放送なんて、出来ないだろうがな・・・」
  「ええ、そうね。正規軍によるクーデター・・・・・・この事実が公表されれば、反政府運動が広がる可能性があるもの」
  ラッセの言葉に、スメラギも頷いた。

  「・・・この情報、世論を味方につけて、攻撃を始めるための布石って感じだけど?」
  の言葉に、スメラギはゆっくりと頷いた。
  「そうね。アロウズは、何か手を持っている・・・・・・・・・ミレイナ、アフリカタワーを包囲するアロウズの部隊配置を表示出来る?」
  「はいです!!」

  表示された配置図に、が眉を寄せた。
  「・・・・・・包囲を、解いた・・・?」
  ぐるりとアフリカタワーを囲んでいるはずのアロウズの部隊が、一部撤退のような動きをしている。
  スメラギも、じっとモニターを見つめる。

  「何だ? 部隊が2箇所に集結してってるぞ?」
  「人質の解放まで、アロウズは静観するつもりでしょうか?」
  ラッセの疑問に、アニューも首を傾げる。

  「・・・いいえ、違うわ。この布陣には大きな意味が隠されている・・・・・・・・・」

  何か思い当たることがあったのか、厳しい表情でスメラギはフェルトを振り返った。
  「フェルト、アフリカタワー周辺、1000キロの風速データを表示して!」
  「な、何故です?」
  「急いで!!」
  突然の指示に驚き戸惑うフェルトに、スメラギは切羽詰ったように声を荒げた。

  慌ててパネルをフェルトが操作し、次々と情報がモニターに追加表示されていく。
  それを眺めていたが、はっと息を呑んだ。

  「・・・これは・・・この部隊配置は・・・・・・落下状況を考慮している・・・?!」
  「まさか!!!?」
  思わず叫んだラッセだったが、ブリッジはその最悪の予想に凍りついた。


  「・・・・・・やはり、もう一機、あるというの・・・・・・?」

  見えるはずも無い宙を見上げて、スメラギは呆然と、そして愕然と、呟いた。

  誰もその予想を否定できず、状況がその最悪の予想を裏付け、恐怖がソレスタルビーイングを包み込んだ。
















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