【すべてのもののなかで 先立つものは「こころ」である
すべてのものは「こころ」を主とし 「こころ」によってつくりだされる・・・】
「アンバーグラウンド教典」第一偈
夜が明けることのない、ここアンバーグラウンドで、誰もが支えとするその教え。
そして、その「こころ」が込められた手紙を配達する、郵便配達員―テガミバチ―通称「BEE」。
人から人へ、托された「こころ」を運ぶ誇りある仕事 だが、その仕事をする人間自身の「こころ」が届いて欲しい相手にちゃんと届くがどうかは・・・・・・残念なことに、また別の話なのだ。本道に、残念なことに .
「出来ました!! じゃ〜ん!! 完成ですっ!!!」
が派手な効果音をつけて、両手を挙げて喜びを表現している。
「・・・・・・」
「ちょっと、何? もうちょっと喜んでもいいじゃん?」
不満そうに頬を膨らますに、モック・サリヴァンは溜息を吐いた。
「ちょぉ、何それ? ・・・あ。さては、見てから驚くつもりだな?!
さぁ、何が出るかな、何が出るかな〜♪」
歌いだしたに、モックは呆れて鼻で笑った。
「ったく・・・こんだけ甘い匂いさせといて、何が出るかなも何もないだろ・・・」
「ん〜!! ノッてくれてもいいじゃん!!」
「嫌だね」
「意地悪〜!!」
「何とでも」
ふん、とバカにしたように笑って、モックは頬杖をつく。
「チョコレートだろ、チョコレート。この匂いに、それ以外に何があるっていうんだ?!」
「ちぇっ。つまんな〜い」
唇を尖らせたが、モックの目の前に皿にドスンっと皿を置いた。
「・・・・・・おい」
「何? 上手く出来ててビックリした?!」
「・・・・・・・・・本気で言ってるのか?」
「??? これ、一番上手く出来たやつだけど?」
の言葉に、モックはヒクッと頬を引き攣らせた。
それは、恐らく、多分、チョコレートケーキ、なのだろう。
イビツに歪んで丸と三角の中間の形をした、表面は焦げているのに皿に接している下の方は半焼けの、何故か毒々しい雰囲気を醸し出している、チョコレートケーキ いや、正体不明の物体だった。
アレだけの時間を費やして、コレか?!
「・・・・・・これ、食えるのか?」
「何で?」
首を傾げるに、食えるわけないだろう!!と叫びたい気持ちをゴクリと飲み込む。
チョコレートなのか? これが?!
そんなはずないだろう?!!
存在全てが語っている 食ベルナ危険!!!
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「今年は、気合を入れて手作りしてみました☆」
固まっているモックに、が楽しそうにウィンクをする。
「意外に簡単だし、作ってて楽しかったし」
にっこりとが笑う。
「・・・色々と聞きたいんだが・・・・・・」
とりあえず食べる前に、モックは目の前の危険物体よりも、もう少しハードルが低いところから突っ込みを入れることにした。
「まず・・・・・・なんで、俺の家のキッチンで作る!?」
「え〜、貸しておいて、今更そんなこと言われても」
「自分の家で作れ!!!」
「あ〜、それは無理。だって、私の家には材料も道具もないもん」
「だってら、買えよ!!!」
「嫌。だって、滅多に使わないもん。モックのとこなら全部揃ってるのに、勿体ないじゃん」
「・・・・・・お前は・・・!!」
の言い分に、モックの握り締めた手がぶるぶると震える。
「それに、ここで作った方が、いろいろと楽だし・・・」
の視線の先を追って モックの顔が青くなる。
キッチンに積みあがった洗物、チョコレートの飛び散った床、散乱した道具類、余った材料は全て出しっぱなしだ。
よく見れば、使うはずのないようなものの残骸もキッチンの隅に隠すように置いてあったりする。
几帳面なモックには耐えられない惨状だった。
「・・・お、お前は・・・・・・!!」
「ね、食べてよ? せっかく作ったんだから!」
目の前の物体に命の危険を感じながら、そうやってに微笑まれたら自分は食べて そして後悔するに違いない、と モそこまで分かっているのに、それ以外の道を思いつくことが出来ず、モックは溜息をぐっと堪えたのだった。
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