「あら〜ん? が厨房に顔を出すなんて珍しいじゃな〜い、どうしたのぉ?」
  「氷が切れたから、貰おうと思ったんだけど・・・何、この匂い?」

  目を丸くするに、ルッスーリアが小指を立てて身をくねらせる。

  「イヤねぇ〜ったら! 明日はヴァレンタインじゃないのぉ!」
  「あぁ、なるほど。チョコレートの匂いか」
  「そうよぉん。ちょうど今から仕事に取り掛かるところなの♪」

  湯煎にかけたチョコレートの溶け具合を確かめながら、サングラスの奥でウィンクをする。

  珍しくが興味をしめしているようなので、ルッスーリアはうきうきと今回の仕事を説明しにかかった。

  「原材料のチョコはねぇ、本場ヴェルギーから直輸入したの。
   それから、こっちのハーブはアタシが育てたものなのよぉん♪
   で、このブランデーがね、非売品なんだけど、ちょぉ〜と脅したら譲ってくれるっていわれちゃってv」

  「へぇ、よかったわね。クッキーと生チョコ?」
  「あら! ったら、よく分かったわね?!」

  材料と道具を見ただけで、何を作るか当てたに、今度はルッスーリアが目を丸くする。

  「そういうところ、やっぱり女なのかしら? 悔しいわ。料理なんて、全然興味なさそうなフリしてたのにぃ〜」
  「まぁ・・・昔はよく作ったから」

  苦笑するに、ルッスーリアは内心、誰に作ったのかと、好奇心をうずうずさせていた。
  ディーノか、笹川了平か、それとも別のボンゴレ関係者か、はたまたルッスーリアも知らない誰かか      .


  「昔の話。そう、昔の話よ。もう忘れたけど」

  ルッスーリアの気配を察したのか、がそう言いながら氷を取りに冷凍庫へと向かう。


  氷を移すその背中を残念そうに睨んでいたら、ふとが振り返った。

  「・・・ねえ、XANXUSも、そのチョコ食べるわけ?」
  「ボス? ボスが食べるわけないじゃないのぉ。でも、ボスにだけあげなかったら、彼、拗ねちゃうでしょ?」

  ルッスーリアの言葉に、が面白そうに笑った。

  「拗ねたの?」
  「そうなの! だから、踏み潰されると分かってるのに、毎年あげるのよ、アタシv これって、愛だと思わない?」

  「他のみんなにも?」
  「そうよん! みんな恥ずかしがってなかなか貰ってくれないから、最後は毎年無理やり口の中に押し込むのよ!」
  「ぅわ〜お」

  「でも、隊長はさすがね! お返しをくれるのは、毎年スクアーロだけよん」
  「意外に義理堅いからね、隊長」

  「そうなのよね〜・・・そうよ! せっかくなんだから、もお返し目当てに隊長にチョコ渡したら?」
  「冗談キツイわよ」

  いいアイディアだと思ったのだが、は呆れたように笑った。

  「そうかしら? だったら、ボスはどう?
   の手作りだったら、ボスも食べるかもしれないわよ・・・アタシ、嫉妬しちゃうわぁ〜」

  「ないない。踏み潰されるの分かってて、あげたりしないわよ」
  「あらぁ、分からないわよ?」
  「分かるって。それに、ルッスーリアの嫉妬を買うかもしれない冒険は、遠慮するわ」
  「そぉ? それじゃぁ、仕方ないわね。飲みすぎちゃ駄目よ、
  「はいはい」

  軽く返事をするに肩を竦めて、ルッスーリアは作業に取り掛かろうと腕をまくった。



  「      ねぇ、ルッスーリア」

  「?」

  氷を抱えて出て行こうとしていたが、脚を止めた。


  「物は相談なんだけど、材料は余分にある?」
  「ええ。1週間ヴァレンタインが続いても困らないほどあるけど?」
  「そっか。分かった」

  「あらぁん?」

  悪戯っぽく笑ったに、ルッスーリアも笑みを浮かべる。

  「誰にあげるの?」
  「さぁ? 何のことかしら」

  意味深な笑みを浮かべて去っていくに、ルッスーリアは考えられる相手の顔をいくつか思い浮かべたのだった。











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