僕らは浮かぶ雲
僕らは流れる葉

僕らは揺れるロウソクの炎
僕らは川底の転がる小石
僕らは沈みゆく大海の船

希望などないと知れ
明日などないと知れ

自分の意思で変えられるものなどないと
ああ   何故気付かない











来週も来月も来年も











        僕に許可なく、死んだりすんなよ      .

  そう言った本人が先に死んでしまうなんて、笑うに笑えない。

  「・・・・・・・・・」

  布団に横になったまま、チャドはその名を呼んだ。

        僕に内緒で、死んだりしたらアカンよ      .

  そう言った本人が、知らないうちに死んでしまっていたなんて、まるで悪い冗談だ。

  「・・・・・・・・・」

  窓の外に広がる夕焼けに、チャドはその名を呼んだ。

        じゃなくて、がいい!!      .

  今更、後悔して呼んでみたって、もう答える声がないなんて、酷すぎる。

  「・・・・・・・・・・・・」

  もう一度、チャドはその名前を呟いた。

        約束しよう。次の夏には、必ずみんなで海へ      .

  あの約束も、もう守る相手がいないなんて・・・・・・チャドは拳を握り締めた。
  傷ついた右腕は、まだ感覚が鈍かったが、生身の左手が痛覚を伝えてきた。

  ずっと、一緒にいられると思っていた。
  ずっと、じゃなくても、まだもう少し、せめて高校生のうちは、一緒にいられると思っていた。
  繰り返しの毎日が、まだまだ続くと思っていた。
  昨日とは少し違っても、延長線上の明日が続いていくと思っていた。
  他愛もない話をしながら、日々は過ぎていくのだと思っていた。
  一緒に空を見上げて、何でもないことに笑いあうのだと思っていた。
  なのに      .

  信じられるわけがない。
  もう窓際のあの席に、彼女が座らないなんて。

  信じられるか。
  学校に行っても、もう彼女の声を聴くことがないなんて。

  信じられない。
  町を歩いていても、偶然彼女と出会うことがないだなんて。

  信じたくない。
  もう彼女が、この世界にいないだなんて。

  「俺は      

  動かせる左手を掲げた。
  夕日を逆光に、影が伸びる。

  (      アブウェロ・・・・・・俺は・・・)

  この手は、守るためにあると、わかっていたはずなのに。
  なのに、守りたかったものを、守れなかった。

  死んだ者の魂は、尸魂界へ行く。
  の魂も、そこへ行ったのだろうか?
  あいつらに殺されて      .

  「・・・・・・くっ・・・」

  尸魂界にいるのなら、死んだ後に会えるかもしれない。
  機会があれば、探すことが出来るかもしれない。
  だが、あいつらに殺されて、魂自体が消えてしまっていたら      .

  「・・・!」

  チャドは唇を噛み締めた。
  一護や死神のように、霊圧を探ることがチャドには出来ない。
  だから、彼女の霊圧が消えたかどうかも、魂魄が消滅してしまったのかどうかも、感じ取れない。
  彼女の死をこの目で見たわけでもない。
  だから、彼女の消失を納得できないのか。

  「・・・、俺は・・・・・・」

  チャドはきつく目を瞑った。
  何を言おうというのか。
  もう、存在しない人間に向かって      .

  「・・・本当に、もう、いないのか? 俺は、俺は・・・・・・・・・」

  真っ赤に染まる空に、チャドは大切だった人の名を呼んだ。





















  「・・・来たな」

  「6体・・・」

  「豪う少ないやん。こりゃ、藍染とは別口やな」

  「そうみたいやね」

  「残念やな。お前を殺したやつは、おらんみたいや」

  「・・・別に、どうでもええやん」

  「なんや〜?! 冷たいなぁ。
   義魂やゆうても、あれだってお前やったんとちゃうん?」

  「知らん。覚えてへんし」

  「そうか〜、残念やな。
   あのは可愛いかったんになぁ・・・俺、お気に入りやったんに」

  「・・・・・・・・」

  「クラスメイトにも、めっちゃ好かれとったんになぁ・・・」

  「・・・だから?」

  「ええんか?」

  「だから、何が?」
  平子真子は急に真面目な顔をした。

  「チャド、言うたか・・・あのデカいののとこにも、1体向かっとる」

  「それが?」
  平子真子は、ニヤリと唇を吊り上げた。

  「別に。何でもあらへん。
   ただ、一護は、あのデカいのは友達やと思っとるからな」

  「・・・・・・・・・」

  「怪我しとるし、多分、加勢に行くやろう」

  「・・・」

  「一護をコッチに引き込むチャンスかもしれへん」

  「・・・勝手にすれば」

  「お前も来い。気になってんやろ?」

  「・・・・・・全然」
  肩を竦めて、平子真子は笑った。

  「だったら、ケジメつけーや、
  平子真子は振り返ることなく歩き出した。

  「・・・・・・嫌な男・・・・・・・・・起こしたんは、そっちの癖に・・・・・・」
  その背中に、彼女は舌打をした。











     あいうえお行で5種のお題/切ないお題より「来週も来月も来年も」
 永遠などない。昨日と同じ明日などない。次の約束なんて・・・・・・

Photo by 塵抹

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