僕らは浮かぶ雲
僕らは流れる葉
僕らは揺れるロウソクの炎
僕らは川底の転がる小石
僕らは沈みゆく大海の船
希望などないと知れ
明日などないと知れ
自分の意思で変えられるものなどないと
ああ 何故気付かない
僕に許可なく、死んだりすんなよ .
そう言った本人が先に死んでしまうなんて、笑うに笑えない。
「・・・・・・・・・」
布団に横になったまま、チャドはその名を呼んだ。
僕に内緒で、死んだりしたらアカンよ .
そう言った本人が、知らないうちに死んでしまっていたなんて、まるで悪い冗談だ。
「・・・・・・・・・」
窓の外に広がる夕焼けに、チャドはその名を呼んだ。
! じゃなくて、がいい!! .
今更、後悔して呼んでみたって、もう答える声がないなんて、酷すぎる。
「・・・・・・・・・・・・」
もう一度、チャドはその名前を呟いた。
約束しよう。次の夏には、必ずみんなで海へ .
あの約束も、もう守る相手がいないなんて・・・・・・チャドは拳を握り締めた。
傷ついた右腕は、まだ感覚が鈍かったが、生身の左手が痛覚を伝えてきた。
ずっと、一緒にいられると思っていた。
ずっと、じゃなくても、まだもう少し、せめて高校生のうちは、一緒にいられると思っていた。
繰り返しの毎日が、まだまだ続くと思っていた。
昨日とは少し違っても、延長線上の明日が続いていくと思っていた。
他愛もない話をしながら、日々は過ぎていくのだと思っていた。
一緒に空を見上げて、何でもないことに笑いあうのだと思っていた。
なのに .
信じられるわけがない。
もう窓際のあの席に、彼女が座らないなんて。
信じられるか。
学校に行っても、もう彼女の声を聴くことがないなんて。
信じられない。
町を歩いていても、偶然彼女と出会うことがないだなんて。
信じたくない。
もう彼女が、この世界にいないだなんて。
「俺は 」
動かせる左手を掲げた。
夕日を逆光に、影が伸びる。
( アブウェロ・・・・・・俺は・・・)
この手は、守るためにあると、わかっていたはずなのに。
なのに、守りたかったものを、守れなかった。
死んだ者の魂は、尸魂界へ行く。
の魂も、そこへ行ったのだろうか?
あいつらに殺されて .
「・・・・・・くっ・・・」
尸魂界にいるのなら、死んだ後に会えるかもしれない。
機会があれば、探すことが出来るかもしれない。
だが、あいつらに殺されて、魂自体が消えてしまっていたら .
「・・・!」
チャドは唇を噛み締めた。
一護や死神のように、霊圧を探ることがチャドには出来ない。
だから、彼女の霊圧が消えたかどうかも、魂魄が消滅してしまったのかどうかも、感じ取れない。
彼女の死をこの目で見たわけでもない。
だから、彼女の消失を納得できないのか。
「・・・、俺は・・・・・・」
チャドはきつく目を瞑った。
何を言おうというのか。
もう、存在しない人間に向かって .
「・・・本当に、もう、いないのか? 俺は、俺は・・・・・・・・・」
真っ赤に染まる空に、チャドは大切だった人の名を呼んだ。
「・・・来たな」
「6体・・・」
「豪う少ないやん。こりゃ、藍染とは別口やな」
「そうみたいやね」
「残念やな。お前を殺したやつは、おらんみたいや」
「・・・別に、どうでもええやん」
「なんや〜?! 冷たいなぁ。
義魂やゆうても、あれだってお前やったんとちゃうん?」
「知らん。覚えてへんし」
「そうか〜、残念やな。
あのは可愛いかったんになぁ・・・俺、お気に入りやったんに」
「・・・・・・・・」
「クラスメイトにも、めっちゃ好かれとったんになぁ・・・」
「・・・だから?」
「ええんか?」
「だから、何が?」
平子真子は急に真面目な顔をした。
「チャド、言うたか・・・あのデカいののとこにも、1体向かっとる」
「それが?」
平子真子は、ニヤリと唇を吊り上げた。
「別に。何でもあらへん。
ただ、一護は、あのデカいのは友達やと思っとるからな」
「・・・・・・・・・」
「怪我しとるし、多分、加勢に行くやろう」
「・・・」
「一護をコッチに引き込むチャンスかもしれへん」
「・・・勝手にすれば」
「お前も来い。気になってんやろ?」
「・・・・・・全然」
肩を竦めて、平子真子は笑った。
「だったら、ケジメつけーや、」
平子真子は振り返ることなく歩き出した。
「・・・・・・嫌な男・・・・・・・・・起こしたんは、そっちの癖に・・・・・・」
その背中に、彼女は舌打をした。
あいうえお行で5種のお題/切ないお題より「来週も来月も来年も」
永遠などない。昨日と同じ明日などない。次の約束なんて・・・・・・
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