生を願うのが本能なら 何故人は死に向かって生きるのか
死を望むのが本性なら 何故人は生に意味を求めるのか
本当は ただ ここに在るだけだというのに
「・・・・・・もう、いいですよ」
のんびりと浦原が告げた。
「コンビニへ行くって言って、出てきたんです」
手に提げた袋を指し示す。
「早く戻らないと、疑われるんっすよ」
わざとらしく溜息を吐いた。
「いつまでそうやってるつもりですか? サン」
「・・・・・・浦原、ウチはあんたがキライだ。趣味が悪ぃ」
ピクリとも動かなかったの口がゆっくりと動いた。
破面―アランカル―の虚閃―セロ―を受け、魂魄が消失したはずのが喋ったことに驚くこともなく、浦原は肩を竦めた。
「アタシじゃありませんよ。今回の件、平子サンの案です」
「・・・・・・なら、何で平子が来んねん?」
「嫌だからでしょうよ」
心底嫌そうに、浦原が眉間に皴を寄せる。
「あなたは寝起きが悪い。それを知っているから、アタシにやらせたんっすよ、あの人は」
「・・・・・・・・・」
浦原が確認するように視線を動かした。
「義骸は、もう駄目っすね」
「虚閃を喰らってカタチが残ったんや。そこは褒めちゃる」
「ありがとーございます・・・・・・義魂は?」
「死んだ」
「そーっすか・・・・・・ご希望なら、もう一度、義骸と義魂、作りますけど?」
「要らん」
あっさりとした返事に、浦原はじっとを見つめる。
「随分と学校生活を楽しんでおられたみたいですが・・・」
「ウチちゃうわ。あれは義魂や。ウチは何も覚えてへん」
「そうっすか・・・・・・」
「余計なことや。興味もない」
「・・・・・・・・・」
浦原は溜息を吐いた。
「・・・・・・そうっすか。でも、一応、伝えときます」
を見つめ、浦原は口を開く。
「黒崎サンも、井上サンも、有沢サンも それから茶度サンも、無事っすよ」
「・・・・・・そう」
抑揚のない冷たい声に、もう一度、浦原は溜息を吐いた。
それから姿勢を正して、腰を折った。
「おはようございます、サン・・・・・・藍染が動き出しました」
「分かった」
「平子さんたちも、仮面の軍勢―ヴァイザード―も動きます」
帽子をかぶりなおして、静かに告げた浦原に、は瞼を持ち上げた。
「やっと、か・・・・・・」
「長かったっすね・・・・・・」
唇を歪めて、ゆっくり頷いて、が体を起こした。
浦原は黙って、長い眠りから醒めたその姿を見つめていた。
「・・・さんは?」
織姫の問いに、一護は答えを詰まらせた。
隠せるはずもないのに、だが言葉は出てこなかった。
「残念ですが・・・」
「そんな・・・・・・嘘・・・・・・」
一護の代わりに、浦原が告げた真実に、織姫の顔が歪んだ。
「誰のせいでもありません・・・ただ、巡り合せが悪かったとしか・・・」
「茶度くんは? ・・・茶度くんは、そのことを・・・・・・」
「・・・・・・井上?」
何故、チャドの名が出るのか分からなかった。
一護にとってのが顔を合わせれば挨拶をする程度のクラスメイトであるように、チャドにとってのも同じだと思っていた。
「・・・・・・さんは多分・・・ううん。きっと、茶度くんのことが好きだった・・・・・・・・・多分、茶度くんも・・・・・・」
「?!!!」
「・・・そいつは・・・・・・やっかいだ・・・」
浦原が帽子を深く被り直して呟いた。
一護も拳を握り締めた。
気付かなかった。
知らなかった。
それがもし本当なら 一護もぎゅっと眉を寄せた。
「・・・・・・知らせないわけには、いかないだろ・・・・・・」
もう一度、自分に言い聞かせるように呟いて、一護はドアノブを回した。
「チャド・・・」
「・・・一護 」
「横になってろ・・・すぐ帰るからよ・・・・・・」
布団に体を起こそうとするチャドと制して、一護は扉を閉めた。
「・・・・・・・・・一護」
玄関に立ったまま、部屋へ上がろうとしない一護の顔を見つめていたチャドが、口を開いた。
「俺は平気だ・・・・・・だから、謝るな」
「!?」
チャドの言葉に、一護は息を呑んだ。
そんな顔して、謝らないで .
織姫にも言われた。
だが、今回の二人の怪我は、自分が弱かったせいだ。
自分がもっと強ければ、織姫を守れていただろうし、チャドに怪我をさせることもなかったはずだ。
自分がもっと強ければ、も 一護はぎゅっと唇を噛んだ。
謝ることしかできない。
謝る以外に、何が出来るというのか。
謝って、元に戻るわけではないけれど .
「・・・・・・すまない、チャド・・・」
「一護・・・・・・気にするな。俺が勝手に怪我をしただけだ」
「・・・・・・・・・」
視線を落とした一護を気遣うように、チャドは尋ねた。
「・・・井上は、無事か? 有沢も・・・」
「・・・・・・ああ」
「そうか・・・よかった」
「・・・・・・・・・」
「?! やはり、あの場にいたのか?!!」
驚くチャドに、一護は頷いた。
「・・・・・・は?」
チャドの質問に、一護は首を振った。
「駄目だった・・・間に合わなかった・・・・・・」
「 ?!!」
「あいつらに・・・・・・・・・いや、俺がもっと強ければ・・・」
「!!!」
チャドの目が見開かれた。
「・・・・・・は、巻き込まれたのか・・・?」
「・・・ああ」
「・・・・・・・・・は・・・助からなかったのか?」
「・・・・・・ああ」
「・・・・・・・・・・・・は、もう・・・いないんだな・・・?」
一護は拳を握りしめた。
「・・・・・・・・・ああ。そうだ」
その答えに、チャドは視線を一護の顔から外した。
一護も、黙って自分の靴先を見つめた。
重い沈黙が部屋を満たす。
掌に、握り締めた爪の痕から血が滲み出すほどの時間の後、小さくチャドが呟いた。
「 そうか・・・・・・は、もう・・・・・・」
「チャド、お前 」
のこと、好きだったのか? そう思わず尋ねそうになった。
チャドの静かなその声に、一護は確信した。
チャドは、のことが大切だった。
間違いない。
自分が弱いせいで、を死なせてしまった。
自分が弱いせいで、チャドにこんな想いをさせた。
全部全部、自分の弱さが原因だ。
「 すまない、チャド・・・・・・」
「・・・・・・いや・・・」
天井を見上げたまま、チャドは黙った。
それ以上、何も言うことが出来ず、かける言葉がみつかるわけもなく、一護はチャドに背を向けた。
何も言えないまま、一護は扉を閉めた。
閉まる扉の向こう、チャドは黙って夕日を見つめていた。
「あ! っち!!お帰り〜」
「よぉ、戻ったか」
「やぁ! 久しぶりだね」
「元気そうで何よりデス」
「何や。随分と機嫌悪そうやん」
「寝起きだな。どう見ても」
「・・・随分な寝坊やな、 ?!!」
「おはよーさん、。えらい楽しんどったやないか、学校生活」
「・・・・・・」
「なんや、なんや、その顔は? 何ぞ不満でもあるんかいな?
お前がもたもたしてるから、オレがわざわざ 」
「真子、刀抜け」
「 はい?」
「刀抜けって言うてんのが分からん?」
「 えっと・・・さん?」
「ウチ、イラついてんねん。早う抜きや」
「・・・マジ?」
「マジで。手加減なしや。いくで」
「ちょ、ちょ、ちょい待てや〜!!!」
「覚悟決めや、真子」
「マジかいな〜?!!」
「うわ〜!! っち怒ってるぅ」
「いつものことだろうよ」
「ふふふ。相変わらずだね、は」
「そうデスね」
「何や。本当に機嫌悪かったんか」
「だな。だが、相変わらずだ。性格も、霊力も」
「・・・・・また五月蝿ぅなるな・・・」
「ちょ!!? お前らも見とらんと、止めや!!!?」
あいうえお行で5種のお題/二人のお題より「本当は」
真実に希望などない。真実は、絶望しか運ばない・・・・・・
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