「伊大哥(ユン・タイコウ)、報告いたします」
伊大哥と呼ばれた男は、机の上で手を組んだ。鷹のように鋭い眼差しで、先を促す。
「タイ支部の張維新(チャン・ウァイサン)には、ここ最近決まった女がいるようです」
「娼婦か?」
「いえ、どうやら三合会(トライアド)の構成員のようです。正式な組員ではないようですが・・・・・・」
机の上を、トン、トン、と一定のリズムで叩きながら、伊(ユン)は報告を聞く。
「・・・・・・ただ・・・・・・」
「続けろ」
「は。その女が"黒狼"ではないか、と・・・」
伊の眼差しが、鋭さを増す。
「"黒狼"か」
「未確認ではありますが・・・」
トン、トン、とリズムを刻む音が響く。
「そうか・・・・・・あいつは"黒狼"を手懐けたか・・・・・・分かった。もういい、下がれ」
「は。失礼致します」
重厚な音をたてて扉が閉められる。
暫くリズムを刻んでいた伊は、その肩を震わせた。徐々にその肩の震えが大きくなる。
「 ククククククク、はははははっ!!」
とうとう伊は声をあげて笑い出した。
「面白い、面白いぞ・・・・・・だから生きることに厭きないんだ」
そう言って、伊は唇を歪めた。
46音で恋のお題より「ん」
愛の言葉はいらない。優しい抱擁も必要ない。ただ、同じものを見てると自惚れてたい・・・・・・
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