「こんにちは〜」
  船首に羊の頭が付いた可愛らしい船に向って呼びかけてみるが、返事はない。
  「ゾロって人、いらっしゃいませんか〜?」
  待っても、反応はない。
  は背後の密林を振り返った。
  「・・・・・・捜しに、行った方が確実か・・・よしっ!」
  腰掛けていた巨大トカゲから立ち上がる。
  「・・・・・・それにしても、可愛い船・・・・・・船長どんな人なんだろ?」
  密林へと足を進めながら、はクスッと笑った。
  「ていうか、ゾロには似合わない可愛さ・・・・・・・・・いや、逆に意外と合うのかも?」
  力の抜けるような顔をした羊と、強面のゾロの顔を思い浮かべて、はもう一度クスッと笑った。











   リップサービス











  「ねぇ、それ・・・エターナルポースでしょ?」
  「うぉっ!!!」
  突然背後からかけられた声に、俺は飛び上がった。
  振り向くと、銀の髪をした女性が窓枠から頬杖をして俺を見ていた。目が合うと、彼女はニコリと微笑んだ。
       美人だ。
  小麦色の肌に映える銀の髪が美しい。ナミさんには劣るが、バストのサイズも、程よく均整の取れたプロポーションも十分合格点だ。それに、笑顔がいい。口では微笑みながらも、どこか挑戦的な色を浮かべた瞳     俺は一瞬にして、彼女の魅力にやられていた。
  「ねぇ、実は困ってるの」
  「・・・どうされました?マイ・レディ」
  「実はね、この島に置き去りにされちゃったの・・・私を置いて一目散に逃げてくんだもの・・・」
  「こんな素敵なレディーにそんな酷い仕打ちをするなんて、信じられませんね」
  「クスッ・・・ありがとう。それで、どこか大きな港がある島まで、送ってもらいたいの」
  彼女は「どうかしら?」と首を傾げた。
  俺は躊躇した。先日、メリー号に突如現れた美女は、愛しのビビちゃんの敵だった。この女性は、どうなのだろうか?ビビちゃんの、そして俺たちの敵なのか?
  さっきだって、いくら突如襲ってきたメガネ猿と巨大ニワトリに気を奪われていたからといって、声をかけられるまで彼女の存在に気がつかなかった。
  この女性・・・・・・もしかすると、相当の手ダレかも知れない。俺はカマをかけてみることにした。
  「・・・・・・それよりも、レディー・・・美人なあなたのお名前を教えていただけませんか?」
  ビビちゃんの敵であるバロックワークスの人間なら、コードネームを持っているはず。ミスとか、ナンバーとか。
  挑戦的な瞳を俺に向けたまま、彼女はゆっくりと口元に笑みを刻んだ。
  「よ、礼儀正しい紳士さん」
  「・・・これは失礼、私めはサンジと申します」
  なるほど。とりあえずは、大丈夫と判断していいだろう。俺は丁寧に腰を折って一礼してみせた。
  そんな俺を、興味深そうにさんは眺めていた。顔を上げた俺と目が合うと、楽しそうに瞳が笑う。
  「・・・つい最近も、こんなやりとりをしたわ・・・・・・」
  「誰だって、さんのような美人の名前を呼んでみたいと思うでしょう。当然です」
  「クスッ・・・ありがと。その時はそんなこと言ってもらえなかったけど・・・・・・あなたと同じ船に、ゾロって名前の剣士いるでしょ?」
  「!!何でっ・・・・・・?!」
  「クスクスッ・・・・・・彼にも同じように聞かれたわ。名前は?って」
  あのクソマリモッ!!!俺より先にさんと御近づきなろうとしたってのかっ!!?・・・・・・許せん。
  「・・・それより、この部屋、蝋で作られてるみたい・・・・・・もしかして、あなた能力者?」
  さんにそう言われるまで俺は、心の中でマリモに対して思いつく限りの罵詈雑言を浴びせていた。
  今更ながら、密林の中に和みハウスが存在しているという違和感と、悪魔の実の能力者の仕業が結びついた。
  ・・・・・・となると、本格的に、俺はこんなところで和んでいるわけにはいかない。愛しのナミさんとビビちゃんが危ない。
  「・・・・・・悪魔の実は食べたことありませんが、恋の果実なら、さん、あなたと食してみたいものです」
  「クスクスッ・・・ありがと。あなた、本当に楽しい人ね」
  ナミさんに危機が迫っているとしても、目の前に美人な女性がいたら放ってはおけない病にかかっている俺をさんはそう評した。
  「申し訳ありませんが、さん。実は今この島で、仲間が面倒に巻き込まれているみたいなんです・・・なので、あなたを船に乗せるかどうかは、俺の一存では何とも・・・・・・」
  さんは、にっこりと笑って頷いた。
  「ええ、船長さんに確認が必要なんでしょ?ゾロに聞いたわ、サンジくん」
  「ええ・・・私めはさんの乗船を快く引き受けたいのですが・・・・・・」
  そう言いながら、俺は再度心の中でマリモに対して悪態をついた。
       何だって、俺の先回りをするんだ、あのくそマリモ!これじゃぁ、俺がマリモの二番煎じじゃねぇかっ!!
  そんな思いを一片たりも顔には出さず、優雅に微笑む。
  「申し訳ありません、さん・・・それでは参りましょうか、マイ・レディ」
  「ええ、よろしく頼むわ。素敵なナイトさん」
  そう言って、さんは俺の差し出した手に指を重ねた。











  「ナミさ〜ん!!ビビちゃ〜ん!!!・・・って、なんて刺激的なんだっ!!!」
  女性二人の刺激的な格好に堪らず走り寄ったサンジを呆れ顔で眺めていた俺は、その後ろから現れた人物を見て思わず声を上げていた。
  「あ・・・お前・・・・・・・・・!」
  「また会えたわね、ゾロ」
  驚いた俺とは対照的に、は俺がいることを知っていたのか、笑って片手をあげた。それから、ふっと眉を寄せた。
  「・・・・・・見てるだけでも、その脚、痛そうなんだけど?」
  「大したことねぇよ」
  そう言って立ち上がる。痛くないわけじゃないが、我慢できない程じゃない。
  「・・・よかったら、簡単な治療ぐらいなら出来るけど?」
  「お前、医者なのか!!?」
  ルフィが突然会話に割り込んできた。
  「・・・いいえ、医者ではないけど・・・・・・応急処置とか、簡単な縫合とかなら、何とか出来るっていう程度だけど・・・」
  「すげ〜な、お前!!医者じゃん!!」
  「違うから、ね?本当、基本的な応急処置レベルだから、ね?・・・分かる?医者とは違うから」
  「何言ってんだよ、治すんだから、医者だろ、医者!!」
  「いや、あのね・・・・・・このレベルなら、その辺にゴロゴロいるから」
  「そうなのかっ!!?医者って、その辺にいっぱいいるのかっ!!!?」
  「いや、いないけどさ・・・・・・・・・ねぇ、どう説明したらいい?」
  とうとう音をあげたが、助けを求めるように俺を振り返った。俺はルフィに説明してやる。
  「簡単な手当てはできるが、医者じゃないんだと」
  「そうか、医者じゃないのか。でも、スゲーな、お前!」
  感覚的にルフィも理解したらしい。
  は俺を見て、「・・・ありがと」と呟いた。ルフィとのやりとりに少々のまれたらしい。
  「お前、まだ船探してるのか?」
  ウィスキーピークでのやりとりを思い出して、俺はに声をかけた。
  頷くに、俺はルフィに彼女のことを話そうとして、嫌な視線を感じた。
  視線の元を辿れば、何故かサンジが俺を睨んでいる。睨み返せば、互いに暫く無言で睨み合っていたが、煙草の煙を吐き出しながらサンジが先に視線を外した。
  「なぁ、ルフィ、実はこんなモンを手に入れたんだが・・・」
  「「「「アラバスタへのエターナルポース!!!!!」」」」
  サンジが取り出したものを見て、喜びの声が上がる。それはそうだ。この島ではログが溜まるまで1年もかかると聞いたばかりだったから。ビビなんか、サンジに抱きついて喜びを表現している。
  鼻の下を伸ばしながら、サンジがルフィに声をかける。
  「で、相談なんだが、彼女もアラバスタまで乗せてあげられないか?舟もないらしいんだ。いいだろ?」
  「ああ、いいさ!よーし、出航だ!!!」
  あっさりとの乗船を認めたルフィに、俺は苦笑した。も、ルフィのあまりにも軽すぎる承諾に、目を丸くして驚いている。
  疑うってことをしない船長だとは知っていたが、さすがにこんなにも簡単に頷くとは・・・さすがルフィとしか言いようがない。
  サンジが得意気に親指を立てて、に功績をアピールしている。もサンジに向けて、親指を立てて、その功績を称えた。
  なるほど・・・・・・そういうことか。納得はいかないが、サンジからガンを飛ばされた理由は何となく理解できた。
  「船に簡単な医療品ぐらいあるよね?後で、傷口みせて」
  そう言ったに頷いて、俺はルフィを呼んだ。振り返ったルフィに、俺はを指した。
  「、って言うんだ」
  「おぅ、よろしくな、!!」
  「よろしく。思ってた通り・・・素敵な船長さんね」
  そう言って、はメリー号の乗員になった。











 アトガキ
  ドリーとブロギーは・・・いるよ!?ちゃんと背景にはいたよ!!?・・・・・・一言も喋らなかっただけでw
  出会ったから変わったのか、変わるために出会ったのか・・・・・・

Photo by 空色地図

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