※イ護のイの字が偉になっています。ご了承ください。
「天化〜、天祥眠った?」
「今、眠ったところさ」
「よっし!!久しぶりにやるわよ、アレ」
「・・・・・・、マジさ?」
「もち」
「・・・・・・・・・ほどほどに頼むさ」
「偉護、今晩これから暇?」
「まーまー」
「あんたが暇じゃないわけないわね、いっつも寝てんだから」
「、ひどくないかい?」
「本当のことでしょうに・・・で、今晩アレやりたいんだけど?」
「あー、久しぶりじゃねーかい?」
「でしょ?偶にはやりたいよね!ってことで、隠してるの、持ってきてね」
「・・・・・・・・・はい」
「王様〜、武王〜〜、姫発〜〜〜、発ちゃ〜ん」
「あーっ!!聞こえてるっつーの!!」
「だって、返事してくれないんだも〜ん」
「・・・今、忙しいんだよ」
「え〜、つまんない!!・・・・・・今夜ヤらない、発ちゃん?」
「・・・ゴクッ・・・・・・ヤるって・・・」
「そ。今晩、待ってるから絶対来てよね!?」
「・・・・・・・・・期待していいの、?」
「いいんじゃない?忘れられない夜にシヨウよ、ね?」
ふしだらな恋人
「・・・・・・・・・と言われて期待して来たけど、やっぱりコレかよ・・・」
月も空へ昇りきった夜更け。姫発はがっくりと肩を落としていた。
「何言ってんの、姫発?久しぶりなんだから、じゃんじゃん飲みな!」
「痛っ」
思いっきりに背中を平手で強打されて、姫発の手から酒がこぼれる。
目の前で繰り広げられている酒宴は盛り上がり真っ最中。
姫発は手の中の杯を一気に呷って空にし、溜息をついた。
「ま、分かってたケド・・・・・・それにしても久しぶりの飲み会だな?で、今日は珍しい人がいるんだな」
崑崙山にいたころからの酒飲み仲間 ・天化・偉護、それから人間界へ来てから加わった姫発。この4人で飲むのがいつものパターンになっていた。酔って偉護が親父ギャグを連発し、姫発がつまらないことで爆笑し、天化はハイテンションになり、は絡み癖を発揮する。
4人がそろう飲み会は、それはそれは異様な盛り上がりをみせるのだが、それ以上に酒の消費量が半端ない。ザルでも酔う量の酒を消費して、それで翌日ケロッとしているのはだけである。他のメンバーは毎回二日酔いの地獄を経験することになるのだが、それが分かっていても酒の量は制限されたことがないのは、さすが酒豪の面々というところだろう。
ちなみに翌日、酒宴の後片づけをするのは、いつでも天化と姫発だ。一番元気なはずのは知らんフリをして雲隠れし、偉護は別の世界へ旅立ち丸一日はマトモに動けないため、決まって貧乏くじを引くの二人なのだ。
その酒宴に、今夜は楊ゼンという珍しい顔があった。いつもと同じすました顔で大人しく酒を飲んでいる。
「あれ、もうお酒ないよ?」
姫発の杯に酒を注いで空になった酒瓶を振って、が不満げに口を尖らせた。
「仙桃、千桃、追加するよーん」
それーと景気よく偉護が仙桃を水に投げ込む。隠しておいた仙桃をこの飲み会のためにに徴収されたらしく、偉護はヤケクソ気味に仙桃を勢いよく投げ入れ、水を次々とに酒に変えていく。
「「「わーい!!」」」
「・・・・・・盛り上がってるところ悪いんですが、僕たちってお酒飲んでも許される年なんでしょうか?」
隅っこでチビチビと飲んでいた楊ゼンが呟いた言葉に、一瞬4人が固まった。
「・・・この面子で一番若いの誰さ?」
「はーい、はーい!俺が崑崙山入ったこんろんが、一番日が浅いと思いまーす!!」
天化の言葉に偉護が元気よく手を上げて答える。
「ってことは・・・・・・一番年下は偉護になんのか?」
「俺、天化、姫発・・・・・・次はかい?楊ゼンかい?」
「どっちさ?」
「って、何歳になんさい?」
黙って酒を飲んでいたに偉護が訊いた。はにっこり笑って
「いくつに見える?」
「えっと・・・・・・」
「あー」
「・・・ピチピチの十代に見えるさ!?」
「いや〜ん、天化ありがと〜!ちょっと間があったのと疑問系なのが気になるけど」
訊いた偉護が言葉につまり、姫発も何も言えず、その二人をフォローするように天化が答えた。改めて姫発が尋ねる。
「で、本当はいくつなの?」
「え〜、乙女に歳を聞くなんて〜」
姫発の言葉にが可愛子ぶって、恥じらいを表現するかのように顔を俯けた。
「・・・・・・くんは、僕が崑崙山に預けられる前から、居たよね?」
「えー、マジで!!?」
「いいの!!!女は熟して綺麗になるの!!!」
楊ゼンの言葉に姫発が驚きの声をあげた。が不満そうな顔で、姫発の言葉を打ち消す。
「・・・それ以前に、この時代に未成年禁酒って制限あんのか?」
「王様でも分かんねぇ?」
「・・・・・・法律とかは、周公旦にでも訊いてくれ」
「ってか、仙桃で作った酒だから、明日になったら水に戻って毒性なくなるんじゃ・・・・・・?」
天化の冷静な言葉に一気に場が醒めた。しかし、ここでまた冷静な突込みが入る。
「・・・でも、俺っち達、毎回二日酔いさ?」
「確かに・・・・・・・・・」
「当たり前じゃん!仙桃で作った酒じゃ酔えないから、私がアルコール度の高いお酒混ぜてるも〜ん」
「「「・・・・・・」」」
「・・・さすが、年長者」
みんなが沈黙したのに対して、楊ゼンがポロッと口を滑らせた。すると、もボソッと
「あたし、妖怪にもホモにも偏見ないから」
「え・・・・・・」
「???!」
「美形のうえに性格が歪んでて、目の前にこんな綺麗な女がいるのに、なんとも思わないってことは、そういうことでしょ?」
「あ、あの、くん・・・・・・何を言っているのかな?」
楊ゼンがの発言を止めようとするが、はまったく意に介さず言葉を続ける。
「あぁ〜あ、こんな美人が目の前にいるっていうのに、甲斐性がない男ばっかりで、嫌になっちゃう!」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・て、男ばっかりって、俺たちも含まれてるんすかー?!」
「俺はと酒が飲めて嬉しいぜ?」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん!さすが姫発ちゃん!!」
「あ、俺だってのこと大好きっす!!」
「あたしも偉護のこと大好きよ?」
「マジかい!!?」
喜ぶ偉護に、はにっこりと笑顔を向け
「隠してる仙桃を出してくれたら、もっと好きになってあげるわよ?」
「・・・、いつから気づいてたんだ?」
がっくりと肩を落とした偉護に対して、は微笑を浮かべたまま手を差し出す。
「はい、仙桃出して、ね?」
「・・・・・・、男心を弄ぶもんじゃないさ」
「あら?最初に女心を弄ぶようなこと言ったのは誰?」
笑顔を浮かべながらも、目は笑っていないに天化も口を閉ざすしかない。
偉護は項垂れたまま、服の袂から仙桃を3つ取り出した。それをの手に渡す。
は手渡された仙桃を自分の袂へ仕舞った。
天化は、偉護がまだ仙桃を3つも隠し持っていたことに驚いたが、は、再び手を差し出した。
「偉護、まだあるでしょ?」
「・・・・・・はい」
偉護は今度こそ観念したらしく、大人しく返事をした。さっきとは別の袂から仙桃をさらに2つ取り出した。
天化は偉護がまだ仙桃を隠し持っていたことに驚き半分、呆れ半分な気分になった。それよりも、何故が、偉護がまだ仙桃を持っていることを知ったのか、そっちの方が気になった。なら分かって当前のような気がするのが、なんとも言えず怖い限りだ。
全ての仙桃を偉護から没収し、はそれを再び自分の袂に仕舞った。
「ありがと、偉護。これは次回の飲み会のために、あたしが預かっておくわ」
「・・・・・・、仙桃出したんだから、俺のこともっと好きになってよ?」
偉護の言葉に、はとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ええ、もちろんよ!偉護、今晩は特別に、あたしが酌をしてあげる」
さっきと同質の笑顔を浮かべて、は酒瓶を傾けた。偉護の杯になみなみと酒が注がれる。
「美人に酌させて飲むお酒は、格別でしょ?」
「ぷは〜」
「偉護ったら、いい飲みっぷりね」
そう言って、再びが偉護の杯を酒で満たす。の笑顔に押されて、その杯を偉護が干す。間を空けずにが酒を注ぐ。
が、仙桃で作った酒にアルコール度の超高い酒とスポーツドリンクを混ぜた(※吸収率が良い為、酔いやすくなります)のを天化は見てしまっていた。は偉護を酔いつぶそうとしているようだ。すでに偉護はにのせられて、の作った酒を瓶ごとラッパ飲みし、意味不明なギャグを連発している。
姫発は隅でいじけている楊ゼンに絡まれて愚痴を聞かされている。姫発は嫌がっているが、楊ゼンはしばらく解放してくれそうにない。
天化は、自分好みの酒を一人で楽しんでいるの傍に寄った。
「な、さっきの話、どこまでマジさ?」
「ん、ホモの話のこと?それは・・・」
「そうじゃなくて・・・・・・」
天化はの言葉を遮ると、煙草を一本取り出し、一服してから訊ねた。
「・・・・・・偉護のこと、本当に好きさ?」
天化の言葉には目を丸くした。
「あら、気にしてたの?」
「そりゃ、気にしたさ」
「ふ〜ん・・・・・・・・・安心して、天化の方が大好きだから」
の言葉に天化が微笑んだ。
「嬉しいさ、」
そう言って天化はの手の甲に唇を寄せた。
「まるでお姫様みたいな扱いね」
くすぐったそうにが笑う。
「もちろん、は俺たちのお姫様さ・・・そして、俺の一番タイセツな人さ」
「あたしも、天化のことタイセツに思ってるわ」
そう言って二人は笑った。
杯を掲げてが叫ぶ。
「まだまだ飲むわよ〜、夜は長いんだから!」
「久しぶりだし、今晩は飲むさ!!」
「仕事放り出してきたんだ。どうせ怒られるんなら、楽しい思いして怒られたいしな!」
「アルコール、あるだけ飲むぞー」
「「「「乾杯〜!!」」」」
夜はこうして更けていくのだった。
アトガキ
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