「!!今日もパフェ、アルか・・・最近、こればかりネ。ワタシ、亭の激辛マーボが食べたいアル」
「ゴメンね、神楽ちゃん。マーボは、なかなか余らなくって・・・今度、作ってあげるから」
「だったら、仕方ないヨ。銀ちゃんにお金払ってもらうネ」
「ええ、そうね」
「それにしても、最近、甘いものばかりネ。飽きたヨ」
「ゴメンね、神楽ちゃん。お店のメニューに、甘味増やそうと思ってるんだけど、どうも納得行かなくて。試作品ばっかり持ってくることになっちゃって」
「仕方ないヨ。差し入れは、の厚意ネ。お金払ってない万事屋は、文句言えないアル」
「結果が出たら、すぐにいつもの感じに戻るから」
「うむ。それまでワタシ、頑張るヨ」
「ありがと」
クリームのたっぷりのったパフェにスプーンを突き刺した神楽に、が、にんまりと、笑みを浮かべた。
「銀さん、最近、妙に甘いもの、多いと思いませんか?」
「ん?そう?」
「ええ。絶対的に多いですって」
ソファーにだらしなく座って、ジャンプを広げながら、ゴマ団子を頬張る銀時に、新八がこっそりと話しかけた。
「さん、前はこんなに甘いもの持って来なかったのに、絶対おかしいですって!」
「そうか〜?俺は、甘党だから全然平気だけど」
「それが、おかしいんですって!!」
メガネを光らせて、ずいっと新八が体を前に乗り出した。
「中華料理店である亭にパフェのメニューを出すって、それだけでもおかしいでしょ!!?」
「だって、俺がリクエストしたもん」
「えぇ〜!!!銀さんのリクエスト・・・・・・それって、もっと怪しいですって!」
「なんでよ?」
「だって、あのさんが、銀さんのリクエストに答えるなんて、絶対何かありますって」
「・・・・・・確かに、怪しいな」
銀時が、ジャンプを閉じた。テーブルを挟んで新八と顔を寄せ合う。
「が、俺のリクエストに答えるなんて、明日、槍でも降るんじゃねぇ?」
「百歩譲って、一度くらいなら、さんも答えるかも知れませんが、これはもう、そういうレベルじゃありませんって!」
「そうだな、怪しい・・・・・・裏があるぜ?」
「銀さん、さんの差し入れが、甘いものになってどれぐらい経つか、分かってます?」
「・・・・・・かれこれ、10日くらい?」
「もう、2週間です!!この2週間、万事屋から甘い匂いが消えないんですよ!!!」
「そんなになるのか・・・ますます怪しいな」
「ええ。これは、完全に、何かありますよ」
銀時と新八はそろって台所の方を窺った。
水音が聞こえる。
空になったタッパや皿を洗っているのだろう、微かにの鼻歌も聞こえてくる。
「・・・・・・怪しいな」
「そうでしょ?」
「これは、あれだな。アレはじゃなくて、どこかの星のエイリアンが俺たちを食そうと、騙して近づいて来たに違いない」
「だったら、今頃さんはっ?!・・・って、そうじゃなくて!!!」
「じゃぁ、なんだ?アレか、アレだな!どこかの星から伝染したウィルスによって、がじゃなくなって、そのうち俺たちを食べようと 」
「それじゃぁ、さっきと一緒じゃないですかっ!!!」
「酷いな、新八!この二つは、全然違うぞ!!同じだったら、有名なアノ映画シリーズがパクリってことになっちまうだろうが!!!」
「だから、そういうことじゃなくて!!!」
台所から顔を覗かせたが、にっこり笑って声をかけた。
「ねぇ、アイス作ってみたんだけど、食べてみてくれない?」
「!!余りものじゃなくて、わざわざ作ったアルか!?勿体ないね!!あんな味が分からない連中じゃなくて、ワタシが全部食べるよ!!!」
「あら、ありがと、神楽ちゃん。でも、私、銀時にも食べてもらいたいのよ」
そう言って、が窺うように銀時を見た。
「食べてくれるかしら?」
「お、おう!受けてたつぞ!かかって来い!!!」
「良かった。じゃぁ、今、出すから、ちょっと待っててね」
再び台所へ引っ込んだに、冷や汗を流しながら銀時と新八、それに今度はそこへ神楽も顔を寄せ合った。
「おかしい!絶対に、おかしいって!!のやつ、何考えてんの!!?俺、食われちゃうわけ?!!」
「銀さん!!いい加減、そこから離れてください!」
「そうネ。これは、どっちかと言うと、食われるのはのほうネ」
「どういうこと〜?!なんか食ったら、腹壊しちゃうよっ?!!!」
「だから、そうじゃなくて 」
メガネを光らせて、新八が声を潜めた。
「 さん、銀さんのために、甘いものばっかり作ってるんじゃないでしょうか?」
「へ?」
「気付いてなかったアルか?銀ちゃんも、鈍いヨ」
「甘いものに目がない銀さんを喜ばせたくて、さん、わざわざ甘いもの作ってるんじゃないでしょうか?」
「・・・どういうこと?」
「いい加減、鈍いヨ。銀ちゃんのウィンナーを狙ってるのは、変態くの一だけじゃなかったってことネ」
「だから、さんも、銀さんのことが好きだった、と」
「なに、それ!!ちょっと、銀さんにとって、サスペンスなんですけどっ?!」
「ここは、覚悟を決めてください、銀さん!!」
「そうネ。を泣かせたら、承知しないアルね!!!」
「むしろ俺、食われる方が良かったんじゃねぇ?!!」
「今こそ、さんの想いに報いてください!!」
「幸せな家庭を築くネ、銀ちゃん!応援するヨ!!」
「ちょっと待て〜!!俺の気持ち置き去り!!?こういうのは、男の口から言わないと、立つ瀬なくなるんですけどっ!!?」
「だったら、はっきり好きだ、って伝えてあげてください、銀さん!!」
「男なら、責任持つアル!!」
「無理〜!!俺、結構、内気な男の子なんですけど!!?ムードとか大切にしたい人なんですけどっ!!?」
「そんなこと言ってられませんよ、銀さん!!男なら、決めてください!!」
「そうネ。初めてが汚い万事屋のソファーの上でも、恋する女なら許してくれるヨ」
「ちょっと、ちょっと!!神楽ちゃん、なんか先走ってるよ〜!!?無理だから、俺の口から伝えるなんて、絶対無理だから〜!!!!!!」
「何が、無理なわけ?」
アイスとスプーンを持ったが、後ろで首を傾げていた。
「いえ、いえ。何でも、ございませんよ、様!!?」
一気に固まった銀時の前に、アイスとスプーンを置いて、は首を捻った。
「まぁ、不味かったなら、言ってもらった方が嬉しいけど」
「そんなことないです!!さんの料理は、とっても美味しいですから!!!」
「そうネ。の料理なら、ワタシ一生食べ続けられるヨ!!」
「ありがと」
笑っては、新八と神楽の前にもアイスを置いた。
「どうぞ、召し上がれ」
三人の反応を確かめるように、その場に腰を下ろしたの前で、銀時は唾を飲んだ。
何かを催促するように見つめる、新八と神楽の視線が痛い。背中を汗が流れ落ちていく。
「ほら!!?お前らも、有難く食え!!溶けちまうから、さっさと食え!!!」
「そうね、冷たいうちに、食べてね」
に促されて、三人はスプーンを握った。
「「「い、いっただきます!」」」
妙な緊張の中、三人でそろってアイスを口に運んだ。
「「「 いっ!!!!?」」」
三人そろって、思わず声を上げた。
それを見て、がにんまりと唇をつりあげた。
「沁みた?」
微笑を浮かべるに、三人が眉を寄せて叫ぶ。
「痛ぇ!!マジ、奥歯がっ!!!!」
「冷たいものを食べたから!!」
「痛いヨ!!?前歯が痛いヨ!!なにアルか〜?!!!」
それぞれ頬を押さえて呻く三人を見ながら、がにんまりと笑みを浮かべたまま、口を開いた。
「ねぇ、実はね、私、この世の中で嫌なものが3つあるの」
「?」
「その一つがね、歯医者。アノ音聞くだけで、寒気がするの」
にんまりと微笑んだまま、が続ける。
「実は、奥歯の詰め物が取れちゃって、どうしても行かなくちゃいけなくなってね」
「!!?ま、まさか・・・!!!?」
「みんな、虫歯があるみたいね?」
「!!それじゃぁ、この2週間、甘いものばかり持ってきたのって・・・!!」
「みんなも、歯医者に行かなきゃいけないわね?」
にっこりと笑ったに、万事屋から悲鳴が響き渡った。
「いや〜!!!俺、歯医者だけは勘弁してぇ〜!!!!!」
「諦めなさい、銀時」
今日も、この街はすこぶる平和だ。
みんなでやれば怖くない
アトガキ
Photo by 塵抹
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