誰もが知っている物語。
昔々、14世紀のイタリア・ヴェローナ。血で血を洗う抗争を繰り返す二つの家。敵対する二つの家に、それぞれ生を受けた男と女の悲恋の物語。
ほら、君も知っているだろう? そう、その物語。
出会ってたちまち恋に落ちた二人は、修道僧の元で秘かに結婚。けれどその直後、二人を引き裂く事件が起こり、男は追放処分、女は別の男と結婚を迫られる。女は、修道僧に助けを求め、仮死の毒を使った計略を授けられる。
けれど、計略は男にうまく伝わらず、女が死んだと思った男は、女の墓で毒を飲む。その直後に、仮死状態から目覚めた女も、男の短剣でその後を追う。
事の真相を知った二つの家は和解するが、死んだ二人は戻ってこない。この世では、結ばれなかった、悲しい二人の物語。
Question.二人が幸せになるためには、どうすればよかったのか?
Answer.スモーキン・ボムの場合
「簡単っすよ。修道僧なんかに任せるからいけなかったんですって。
10代目にとっての俺みたいに、頼れる部下を持てばよかったんですって。
例えば、何がなんでも、10代目の為ならどんなことでもやってみせるという、それだけの心意気のある、俺のような(強制終了)」
確かに。作戦が成功しさえすれば、二人はどこか別の街で、幸せに暮らせたかもしれない。
Answer.山本武の場合
「よく分かんねぇけど、お互いに好きあってんなら、それで幸せなんじゃねぇの?
両思いなら、ハッピーじゃんな」
間違ってはない。それで満足して、心が繋がっていることを信じていけたなら、それは一つの幸せのカタチかもしれない。
Answer.笹川了平の場合
「うむ。どうしても一緒になりたいというのなら、極限に好きだと、周囲に認めさせるしかなかろう!!
極限に愛していると訴え続ければ、その思いに周りも動かされるものだ!!
この二人は、極限にわが道を貫くべきだったのだっっ!!!!!」
そうだな。二人の愛が本当なら、情熱があれば、周りを説得して、そうして幸せになれたかもしれない。
Answer.ボンゴレ10代目の場合
「え!!俺っ?!!・・・え、そういうのよく分からないけど・・・・・・
・・・そうだな・・・二つの家が、仲良くなったら、良かったんじゃないかな、って・・・・・・・・・」
多分、それが正しい。
敵対なんてしていなければ、二人の想いは何にも阻まれること無く、きっと一緒になれただろう。周囲からも祝福されて、二人は笑いあいながら、お互いを求めたに違いない。
花の降る石畳の道を、二人は手を取り合って歩く。幸せに満ちた笑みを浮かべ、二人のこの先に希望を抱いて、一生離れることはないと誓いあう。永遠の契り、幸福の時 幸せな二人に祝福を。
では、次の話。
現在のイタリア。ボンゴレの同盟ファミリー、キャッバローネ・ファミリーのボス、『跳ね馬』ディーノの物語。
再会した幼馴染は、反逆を企てる傘下の・ファミリーのボスの一人娘。
人質としてキャッバローネに差し出された彼女のために、ディーノは裏切ると分かっていながら・ファミリーを粛清できないでいる。
だが、やはり。・ファミリーは、キャッバローネを裏切った。
・ファミリーは粛清するしかない。そして、また、人質として差し出されていた幼馴染の彼女も、生かしておくわけにはいかない。ディーノは、彼女の、の命を奪うしかない。
そんな筋書きを辿るしかない、ディーノとの悲しい物語。
Question.二人が幸せになるためには、どうすればいいのか?
Answer.スモーキン・ボムの場合
共謀して計略をめぐらせ、信用の置ける部下に協力を得て、どこか別の街へと逃げる。
「スモーキン・ボムの回答は、ダメだな・・・・・・俺に、頼れる部下はいっぱいいるが・・・」
ディーノは寂しげに微笑んだ。
「例え、俺が死んだって、、君は、俺の墓の前で毒を飲んだりしてくれないだろう?」
Answer.山本武の場合
お互いに思いあっているのなら、それが幸せ。それ以上は望まない。
「山本の回答も、俺には無理だ・・・・・・幸せの定義は、個々で違うだろうが・・・」
ディーノは唇の端をつりあげた。
「俺は欲張りなんだ。再会できたのに、想いだけなんて耐えられない。俺は、の全てが欲しい」
Answer.笹川了平の場合
周囲を説得し、二人の想いを周囲に認めさせる。自分の気持ちを押し通す。
「笹川了平の答えも・・・難しいな・・・・・・そう出来たら、どんなにいいか・・・」
ディーノは、祈るように頭を垂れた。
「・・・だが、それをするには、キャッバローネは大きすぎる・・・俺の背負ってるものは、重すぎるんだ・・・」
Answer.ボンゴレ10代目の場合
敵対する二つのファミリーの仲を修正する。
「・・・・・・ツナの言うように出来たら、どんなによかったか・・・・・・・」
ディーノはギュッと目をつぶった。
「・・・でも、もう、無理なんだ・・・もう・・・・・・・・・」
痛いほどに眉を寄せ、ディーノは一人頭を抱えた。
「・・・・・・だって、俺は、・ファミリーを粛清した・・・・・・」
二度目の裏切りを許すことなく、キャッバローネ・ファミリーのボスとして、ディーノはの父が率いていた・ファミリーを滅ぼした。
・ファミリーは、すでに、この地に存在していない。もちろん、のボスである、の父親も、すでにこの世に存在していない。
嘗ての物語のような運命を、たとえディーノとが辿ったとしても、それによって和解するファミリーはすでにない。
ディーノの想いの先に、誰からも祝福される未来などはない。
フラワーシャワーが降り注ぎ、二人が手を取り合って歩く石畳の小道もない。
幸せに満ちた笑みも、全てを乗り越えていける希望も、永遠を誓い合う教会も、何もありはしない。
「・・・どうして、こんなことになったんだ!!?・・・・・・」
ディーノが訪れるたびに、香ったハーブティーの匂いはすでに失われた。
いつも奏でられていたピアノの蓋は、あれ以来開けられることもない。
目があうたびに向けられた、あんなにディーノの心を痛ませた、微笑すらもう存在しない。
「 ・・・・・・・・・」
ディーノは、そっと指を伸ばした。
けれど、その指は宙で行き場を見失ったように引き戻される。
握り締めた拳を額に押し当てて、ディーノは呻く。
(どうして、どうしてだ!!? !!!
俺は、君の笑った顔が見たかっただけなのに!!
君に生きていてほしいと思っただけなのに!!!
君と一緒に生きていきたいと望んだだけなのに!!!!!)
望めば願いが叶うと、そう信じることが出来るなら、ディーノはいくらだってとの未来を願うだろう。
信じれば何もかも叶うと、奇跡が起こると言われたなら、ディーノは何もかも捨ててを望むだろう。
だが、きつく握り締めていた拳を開いても、その手には何も戻らず、ディーノは自嘲の笑みを浮かべて顔を上げた。
「・・・結局、俺たちが、幸せになるなんて、最初から無理だったのか・・・・・・・・・・・・」
呟いて、ディーノは横たわるを見つめる。
触れれば壊れてしまいそうで、ディーノはその体に触れることさえ、その髪を撫でることさえ出来ず、ただただ見つめるだけ。
ディーノの問いに答える声すらなく、閉じられた瞳は開くことすらなく、一筋の雫が頬を伝った。
不可能は不可能
アトガキ
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