「銀時・・・あんた、馬鹿でしょ?」
「馬鹿ってなに?!それが、傷だらけの銀さんにかける第一声なわけ?!!」
「だって。そんなズタボロなくせに、出歩くなんて、馬鹿としか言いようがないでしょ?」
「ひっで〜!!馬鹿って言った方が、馬鹿なんですよ?知ってましたぁ?」
「・・・その論法でいくと、言った回数多い、銀時の方が、ってことになるんですけど?」
冷静に指摘したに、銀時が返す言葉を失った。そのまま、二人は睨み合う。
放っておけば、そのまま3日でも続きそうな気配に、溜息を吐いた新八がやれやれと腰を上げた。
「銀さんも、さんも、いい加減にして下さい・・・・・・玄関先で喧嘩しないで下さい。大人気ない」
「喧嘩じゃないわよ?お小言だから、気にしないで」
「大人気なくて結構!男は一生ピーターパンなんだよっ!」
「・・・・・・なんでもいいんで、上がってください」
今日もにぎやかになりそうだ、そう思って新八は溜息を吐いた。
「はい。今日の分」
「いつもすまないアル、!!」
「気にしないで、神楽ちゃん。お店の、余りものだから」
「それでも、ここのマズイ飯に比べたら、月とスッポン、お姉さんとおばさん、くらい差あるネ」
渡されたタッパを早速開けた神楽が、中に入っていた春巻きを口に放りこんだ。
「美味し〜アル・・・亭の中華は最高ネ!!!」
「ありがと。神楽ちゃんにそう言ってもらえると、私も腕の揮い甲斐があるってもんだわ」
にっこりと微笑むを見て、新八がソファーにだらしなく座ってジャンプを広げている銀時に近づいて耳打ちした。
「いいんですか、銀さん。神楽ちゃん、しっかり餌付けされてますよ?」
「いいんじゃないの〜?アレは餌付けされても3分経ったら忘れるから」
きゅるきゅると回転しながら飛んできたタッパが、銀時の天然パーマの頭にぶち当たる。
「痛ぇな!!このクソババア!!!」
「私がクソババアなら、銀時だってクソジジィでしょ!!歳、変わんないんだからっ!!!」
「俺は少年の心を持ってるから、大丈夫なんだよっ!!クソババァって言われて、反応する奴が、クソババァなんだよ!!」
「黙れ、天パ!神楽ちゃんに優しく出来ない奴なんか、男の風上にも置けないね!女の子苛めるような奴は、男のクズだね!」
「うっせー!!神楽を女の子扱いする奴なんか、くれぇだよ!!そんな大飯喰らい、相撲取り扱いして調度いいんだよ!!」
「銀時!!!育ち盛りの女の子に向って、なに言ってんの!!!」
再び勢いよく飛んできたタッパを、今度は避けた銀時だったが、続いて飛んできたレンゲが顔面にクリティカルヒットした。
ちなみにタッパは、銀時が避けたせいで、新八の鳩尾に減り込んでいる。
「減らず口叩く余裕があるんなら、それでも食べて、さっさと寝てなさい!傷だらけの怪我人なんだから!!!」
先に銀時の頭にぶち当たったタッパを開ければ、中から型崩れしてズルズルになったマンゴープリンが現れた。
新八が呻きながら、自分の鳩尾に当たったタッパを開けば、どうりで効いたわけだ、ずっしりと中華粥が入っていた。
「ったく。自分の体ぐらい、自分で管理しなさいよ。怪我人っていう、自覚ぐらいはあるんでしょ?」
「・・・・・・・・・おせっかいヤロウが」
「ヤロウ、じゃないです。私は、正真正銘の女ですから」
「ちっ・・・・・・・・・・・・・・・おーい、新八、冷蔵庫からガムシロ取ってこい」
「・・・・・・銀さん、何にかける気ですか?」
「いいから、取ってこい」
「ほら・・・相変わらず、吐き気がしそうな甘党ね」
差し出されたガムシロをひったくるように奪って、銀時はを睨んだ。
「・・・・・・分かってんなら、最初から、もっと甘くしてこいってんだよ・・・」
「あら、残念。これは、店の余りものなの。生憎、銀時の為に作ってるわけじゃないから、これ以上、甘くは出来ないわね。
そんなことしたら、糖尿病患者大発生、売り上げガタ落ちの上、お客が銀時しかいなくなっちゃうじゃない?
そんなのは、私、ゴメンだから。第一、お客が銀時だけになったら、ツケだらけで、お店潰れちゃうわ」
「ふん・・・・・・可愛げのない奴だな」
「お互い様でしょ?」
は、にやりと笑った。
「銀時が、どうしても、って頼むんなら、銀時専用の料理人になってあげてもいいわよ?」
「はん!ゴメンだね!!四六時中、と一緒にいるなんて、ストレスで禿げるね?!もう、つるっつるだね!!」
「こっちだって、四六時中銀時と一緒にいたら、胃潰瘍で激痩せね?!ええ、もうそりゃぁ、ガリガリだわ!!!」
「そりゃぁ、良かったじゃねぇか?!ダイエットに励まなくてもいいぜ?一石二鳥だ!!良かったら、うちで雇ってやろうか?!!!」
「万事屋で二束三文で働く気はないわ!給料の支払いが滞るようなところは、お断りよ!!
そ、れ、に!!私は、銀時が頼むんなら、って言ったのよ!?
片膝ついて、私に忠誠を誓うなら、って言ったの!!」
「はっ!!!思い上がってんじゃねぇぞ!!?
そっちこそ、三つ指ついて頭下げんなら、考えてやるよっ!!!!」
おでこをぶつけて言い合う二人の横で、新八が溜息を吐いた。
「・・・・・・毎回、毎回、よく飽きませんね、二人とも」
「新八、お前、馬鹿アルか。昔からよく言うヨ!喧嘩するほど仲がいい、強い女は肝っ玉母さん、ここで会ったが百年め、ネ!!」
「・・・・・・よく分からないよ、神楽ちゃん。とりあえず、最後のは絶対、間違ってるから」
「そうアルか?昨日のドラマでやってたネ!そのセリフ言った後、二人で仲良く殺しあってたヨ?!!」
「・・・・・・僕は、時々、神楽ちゃんの、仲良く、の基準が分からないよ」
相変わらず、ぎりぎりと睨み合ってると銀時を眺めて、新八は大きく溜息を吐いた。
「・・・・・・仲良いんなら良いで、もっと大人気ってものを持って欲しいよ・・・・・・」
「じゃぁ、神楽ちゃん、またね」
「明日も待ってるヨ、!!」
「そうね・・・また、余りものが出たら、もって来るわ」
玄関先、神楽に笑って挨拶をしてから、はギロリと銀時を睨み付けた。
「・・・ただし、デザートが残っても、持ってこないから。私が食べとくわ」
「そうしろ、そうしろ。期待なんかしてねぇよ。デザート食べ過ぎて、ぶくぶく太れ、太れ」
「・・・・・・銀さん、大人気ないですよ」
「怪我人は、大人しく寝てなさいね、銀時?」
恐ろしく凄みのある笑顔を浮かべたに、新八は慌てて玄関戸を開けた。
「じゃぁね、神楽ちゃん、また明日」
「バイバーイ、!!!」
扉をくぐったを、新八は階段まで送る。
「・・・・・・新八くん、銀時のこと、お願いね?」
「・・・分かりました。無理はさせませんから」
「ありがと」
そう言って晴れやかに微笑むと、足取り軽くは階段を降りていった。
その背中を見送って、戻ろうと振り返れば、いつのまにか銀時が玄関先から出てきていた。手摺に肘を置いて、何やら物思いに耽る銀時に、新八は溜息を吐きながら、聞いてみたいと思っていた質問を口にした。
「・・・ねぇ、銀さん・・・・・・銀さんにとって、さんって、何なんですか?」
「あん?なに言ってんの?どういうこと?」
「だから・・・来る度に喧嘩してるから、銀さんはさんのこと、どう思ってるのか、気になっただけです・・・・・・別にいいですけど」
ちょっと怒ったように尋ねれば、しばらく宙を眺めた後、面倒臭そうに、銀時が口を開いた。
「ほら、あれだ。発売日にジャンプが売り切れてたとするだろ?そしたら、新八、お前どうするよ?」
「そうですね・・・銀さんが読み終わるの待ちます」
「なに言っちゃってんの?!俺は、貸さねぇよ?!
読み終わっても、また読み返すから!投稿葉書から、作者の一言まで、全部読むから!
俺が読み終わるの待ってたら、お前、一週間遅れになっちまうよ?!
それでいいわけ?ジャンプ読者として、それでいいわけ?!」
「なんですか、その無駄な愛読者魂・・・」
「新八、分かってないな?!ジャンプは少年の心だよ、魂だよ?!!それを蔑にしちゃって、どうすんの!!!!?」
「・・・・・・・分かりました。別の店に買いに行きます」
「だろ?そうだろ?それでこそ、男だ!男は、いつまでも少年の心を持ってなきゃ、女にモテねぇぞ!!!」
「・・・・・・・・・分かりましたから。で、それとさんと、どう繋がるんですか?」
「だから、そういうことだよ」
「別のところへ買いに行くってことですか?」
「お前、なに言っちゃってるわけ?!本人に聞かれたら、どうすんの!!!?俺ら、明日の朝日、拝めないよ?!!!!!」
「・・・・・・そう言ったのは、銀さんでしょ?」
「俺が、いつ、そんなこと言ったよ?!何時何分何十秒?地球が何回、回った時?!」
「・・・・・・もういいです」
「ったく、分かんねぇ奴だな・・・・・・・・」
ガシガシと天然パーマを掻いて、溜息を吐いた銀時は、手摺に体を預けた。今日も、江戸の町はすこぶる平和だ。
程よく晴れ渡った青空を見上げて、銀時は目を細めた。
「 売り切れなんて、冗談じゃない、ってことだろうがよ・・・・・・・」
人はそれを愛と呼ぶ
アトガキ
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